はじめに


日本の鉄道路線をプライベートで全て乗車した鉄旅タレント木村裕子が、鉄道初心者さんでも楽しめる「おもしろ鉄旅プラン」をご提案します。
今回は、青春18きっぷシーズンに気軽に難関路線で夏をエンジョイ出来る路線をご紹介します!

Text&Photo:木村裕子

鉄ヲタも躊躇する飯田線


飯田線は愛知県JR豊橋駅から長野県JR辰野までを結ぶ全長195.7km、94駅の山路線です。列車本数が少ないうえに途中で乗り換えて他路線へ抜けることも出来ず「乗ったら終わり、降りても終わり、途中で運休したら自宅へ帰れない!」と、ベテランの鉄ヲタでも乗車するのにちょっと躊躇してまう難関路線。私もここを乗り鉄する時は、「よし!乗るぞ!」という意味不明な気合を入れてしまうほどです。そんな飯田線をもっと手軽に楽しんでもらうためにも、とっておきの夏プランをご紹介します!


おもしろ駅舎とお得すぎるモーニング


車窓が民家から緑いっぱいの山々へと変わる、豊橋駅から列車で約1時間半の場所にある東栄駅で下車してみましょう。ホーム側から駅舎を見ると、怒っているような外観デザインにビックリ。これは、重要無形民俗文化財にも指定されている、11~3月にこの地域で開催される「花祭」で使用する鬼の面をモチーフとしたものです。
駅舎内には「ちゃちゃカフェ」という喫茶店があり、8~11時には東海地方の最強文化”モーニング”をいただくことができます。ロールサンドパンやフルーツにドリンクが付いてなんと380円! 東栄駅を盛り上げたいというオーナーさんが「儲けのためじゃない。ここはみんなで遊ぶ駅だから」というおもてなしの心から生まれたメニューというのが嬉しいですね。

店内からは飯田線をバッチリ見ることができ、私が行った時は新幹線のお医者さんとして有名な黄色い新幹線”ドクターイエロー”の在来線バージョン、”ドクター東海”という珍しいキヤ95形が走っていく姿を目にできました。店内の鉄ヲタの目がキラキラ輝いた瞬間です。

飯田線を見ながら川遊び


地元の方と触れ合った後は、東栄駅から列車で20分ほどの三河槇原駅へ。駅から徒歩約10分に位置する「湯谷園地」では、渓谷を挟んだ板敷川沿いで川遊びができます。浅い場所があるので、お子様連れのファミリーにも人気のとっておきスポット! 夏にはヤナ場が設置されアユのつかみ取りもできます。獲った鮎は1匹650円でその場で塩焼きにしてくれますよ。

器具や食材を持ち込めばBBQも可能。透明でとっても冷たい川は、肩まで入るのに思わず「ひゃあ~!」と声が出てしまいますが、それも楽しみのひとつ。渓谷に囲まれた川からは飯田線を見上げることができ、列車が通るとみんなが手を振って車内の人もそれに応えてくれる、その一体感に嬉しくなります。

◆湯谷園地(ゆやえんち)
住所:新城市能登瀬上ノ段55-1
営業時間:10:00~15:00
定休日:8月1~31日(金) 毎日営業
    9月は土・日曜日・祝日のみ営業、17日(月祝)まで


飯田線レベルを上げるには秘境駅


「こんなプランじゃぬるい!」という方は、ぜひ秘境駅下車にチャレンジして下さい。飯田線には駅の周りに何もなく、降りたら数時間列車が来ないという秘境駅がいくつかあります。小和田駅・為栗駅・田本駅・金野駅・千代駅が有名ですが、もっとも難関なのは為栗(してぐり)駅。中でも下り列車で17時56 分に下車した場合、次の下り列車は21時55分なので、待ち時間4時間という修業ができます。

駅の周りには天竜川と吊り橋があり絶景ではありますが、この時間は灯りも人の気配もなし! そのため秘境駅を独り占め出来る優越感には浸ることはできますが……私は絶対耐えられません(笑)飯田線の秘境駅で下車する際はくれぐれも上下線列車の時刻を確認して下さいね。

最後に木村ポイント!


以前、途中駅の伊那市駅で講演会のお仕事があった時、鉄道に詳しくなく飯田線の列車本数を知らなかったマネージャーが、当日現場へたどり着けず開演後に到着する……というハプニングがありました。こんな失敗をしないように、しっかりと事前準備をしたうえで、ディープで難関な飯田線乗り鉄へ向かって下さいね。




情報提供元: 旅色プラス