一休は、宿泊予約サイト「一休.com」と在庫連携する「Yahoo!トラベル」で、Go To トラベルで国から補助される旅行代金の35%分相当額に対して、本来は徴収する必要がない決済手数料を徴収していたことがわかった。
一休では、送客手数料と決済手数料が一体となった手数料を宿泊施設から徴収している。手数料率は現地決済では10%、事前カード決済では13.5%で、実質的に3.5%分が決済手数料となる。
事前カード払いの場合、Go To トラベルで国から補助される旅行代金の35%分相当額に対しても、13.5%分の手数料を徴収している。Go Toトラベルの補助分に対しては確実に国から支払われることから、一休は決済手数料をはじめ一切の負担は生じない。にもかかわらず、決済手数料を宿泊施設側が負担するのは過大徴収であると宿泊施設側は訴えている。
一休の利用規約によると、カード決済手数料は「カード決済施設利用料」として、「利用者がカード決済システムを用いて事前に支払を済ませた宿泊金額」と定義している。このため本来であれば、あくまで利用者が実際に支払った国による補助額を除いた金額のみが、手数料の対象になる。
観光庁の発表によると、7月22日から11月15日までのGo To トラベルの割引支援額は少なくとも約3,080億円で、宿泊・旅行代金の割引は少なくとも2,509億円に達する。一休では具体的な取扱高は非公表であるものの、親会社であるZホールディングスの決算資料から推測すると、補助分だけで数百億円程度の売上があったとみられることから、数億〜十数億円規模で本来は徴収すべきではない決済手数料を得ていた可能性がある。これらを値下げ原資として顧客に提供することにより、一休は他社に対しての優位性を得ている可能性があり、公金の使途としては不適切であるとみられる。
一休では利用者に対し、事前カード決済で5%、現地決済では2.5%の一休ポイントを付与している。付与するポイントを予約時に使うこともできることから、事前カード決済の利用率は高いとみられる。なお、楽天やじゃらん、るるぶトラベルなどでは、送客手数料と決済手数料は分離されており、一休の方式とは異なっている。
一休は、ヤフーなどを傘下に持つ、Zホールディングスの子会社。ヤフーは、Go To トラベルの事務局業務を受託しているツーリズム産業共同提案体の協力団体の1社でもある。本誌が一休の広報担当者に事実を確認したところ、「特に回答はない」と話し、手数料率などは「非公表」とした。
多くの宿泊施設が、新型コロナウイルスによる需要の減少によって困窮している。一方で、雇用の維持やライフラインとしての責務から、稼働率が低い状況であっても営業を続けている施設も多く、雇用調整助成金などを活用して生き延びているのが現状だ。各施設にとってはわずか3.5%の決済手数料であれ、営業を継続するために必要な原資であるだろう。本来、Go To トラベルの補助金は、宿泊施設や地元の一次産業、土産店などの中小企業などを支援するために使われるべきものだ。事実上の決済手数料として、本来必要ない手数料を徴収することは、事業の趣旨に反しているといえよう。一休やZホールディングス、そしてヤフーには、決済手数料を徴収する理由の詳しい説明が求められる。