TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
世界の急速充電の主な規格は、私達にとって馴染みのあるCHAdeMO(チャデモ)だけでなく、中国のGB/T、テスラのSC(スーパーチャージャー)、それに欧州のCCS(Combined Charging System)の4種類ある。
チャデモは、ご存知の通り日本が中心となって、自動車メーカーのみならず、電力会社や電気機器製造会社が一般社団法人CHAdeMO協議会を組織して、チャデモ規格を推進してきた。
2018年8月時点でチャデモ協議会には、41ヵ国から416団体が参加している。その結果、チャデモ規格に沿った急速充電器の設置は着実に進んでおり、自動車メーカーもそれに対応した車両を発売し現在に至っている。
一方でチャデモ協議会は、別の動きも見せて来た。2018年8月、"超急速充電規格"について、中国の中国電力企業聯合会と共同で開発していくことを発表したのである。当時、チャデモ協議会が公開した資料によると、中国から次世代の超急速充電規格の共同開発を持ちかけられ、それに乗った形である。当時の日本ではチャデモに変わる次世代高速充電を計画していたところであったため、チャデモとの互換性を確保できること、またシェア拡大の魅力等を勘案した結果、350kWhを越える規格の共同開発を決定したのだ。
それから1年半ほどを経た2020年2月、チャデモ協議会がリリースを発表した。日中で共同開発中の次世代超高出力充電規格(プロジェクトコード:ChaoJi/チャオジ)による日本初の充電デモを2020年2月6日に実施した、というもの。
当日はチャデモ協議会の姉川会長のほか、日本、中国(台湾)、欧州企業が参加して、 チャデモ3.0通信プロトコルや新形状の液冷式充電コネクター(最大充電電流:600A)による優れた挿抜性、それにアダプターを用いた現行チャデモ規格との下位互換性などが確認さた。順調に開発が進んでいることを伺わせたが……
続いて先月、この次世代超高出力充電規格(プロジェクトコード:ChaoJi/チャオジ)をチャデモ3.0として4月25日に発行したことが発表された。発行したのは、チャデモプロトコル3.0版の設計要件(テクニカルペーパー)。日中で共同開発したChaoJiコネクタを使ったEV急速充電のチャデモ版である。中国側でも同じChaoJiコネクタを用いて中国規格(GB/T)の通信プロトコルを使う新たな規格の作成作業が同時進行中であり、そちらの規格発行も2021年内に完了する予定であるという。
チャデモ3.0の特徴としては
1) 500kW超級(最大充電電流:600A)の超高出力対応
2) 液冷技術の採用および ロック機構のインレット側への移設等によるコネクタの小型化と充電ケーブルの小径・軽量化
3) チャデモ3.0車両の既存急速充電器(チャデモ,GB/T,CCS)との後方互換性確保
があげられた。欧州・米国からも有力企業がプロジェクトに参画して、先端技術の粋を集めた開発が進行している。インドは検討への参画を正式に表明しているほか、東南アジア、韓国の政府・企業等も強い関心を示しており、次世代の世界統一規格としてその普及への期待が拡がりつつある。
日中両国関係者間では、今後更なる技術検討を進めると共に、新規格に基づいて試作された超高出力充電器の市場へのトライアル設置や技術デモンストレーション等を通じ、日中をはじめ世界各地でこの次世代新規格の高い技術やポテンシャルを広く情報発信していく事を合意した。
チャデモ協議会では今年度、この新規格の試験要件等をまとめる計画で、新規格に基づいたEVの市場投入は大型車両を皮切りに、早ければ2021年にも可能となる見通しである。
日本発のチャデモが中国という強大なパートを得て、世界統一規格に育つことが出来るのか……今後に期待したい。