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先代のJB23、あるいはそのひと世代前のJA12/22から四半世紀近い年月をかけ継承・熟成されて来た、ラダーフレーム+コイルリジッドというメカニズムを持つ新型ジムニー。
この方式は今や世界的に見ても極めて稀少だが、高機動クロカン車としての理想を追求したその姿は、これまで以上に輝きを放っている。
FRONT
ラテラルロッドとステアリングロッドの位置関係の適正化も、JB23に対し操安性が向上した要因。各ブッシュのサイズは基本的にJB23と共通だが、中心のカラー部分が大径化され集結剛性を向上。kudo-jのフロントアームはキャスター補正、ホイールベース補正を行う。そのため、スタビマウントのダウンは不要。
REAR
リアのアーム(トレーリングアーム)に左右独立セッティングのブッシュでコーナリング性能を向上させている。3リンク特有のクセを消しながらロードホールディング性と乗り易さを追求した結果だ。(注:フロント/リア共にアームやショック、スプリング、ラテラルロッドなどは工藤自動車製。)
「JB23には独特のクセがあって、運転している間も “ジムニーに乗ってる”という感覚が常にありましたが、JB64はそれが全くと言って良いほど無い。フツーの軽自動車やコンパクトカーなどから乗り換えても、目線の高さが違う程度で、フィーリングはとってもナチュラルです。
見た目の魅力はもちろんですが、この親しみ易さも納車が1年、2年待ちと言われるほどのヒットを生んだ理由の一つだと思います」と工藤さん。
とはいえ、JB64はクロカン4駆的な性格から乗用車的に変わってしまったのかというと、決してそうではない。
JB23譲りのタフネスさはしっかり受け継がれており、その中で物足りなさや荒削りに思えていた部分が見事なまでにアップグレードされているというのだ。
例えば、ジムニー特有の持病とも言えるステアリングの微振動。
症状が激しくなるとジャダーストッパーのようなパーツでの対策が必要だったが、JB64ではこの微震動がほとんど感じられないとのこと。
「ステアリングダンパーの採用が大きな理由、という声もありますが、直接的な改善のポイントはもっと他のところにあります。
その一つがリーディングアームとラテラルロッドの支点の位置関係の最適化。結合部分のボルトサイズの大型化(M12→M14)も効いてます。
本題の趣旨とはズレちゃいますが、これらの中にはJB23にフィードバックできるモノもあります。見れば見るほど、アイディアが湧いて来ますね」。
その他、後にも紹介しているように、クロスメンバーの本数の増加やボディマウントブッシュの大容量化、アクスルハウジングの強化なども上質な乗り味の実現に一役買っているとのことだ。
発想の原点は、子供の頃に見た映画の1シーン
工藤自動車製トレーリングアームのアクスル側に使用されているブッシュは、左右が非対称。これは、バインディング効果を逆手に取ったもの(縦置きエンジンのクランクシャフトの回転方向と車体側の動きとの関係から発案)。子供の頃に見た映画の中で、オフロードトラックがフル加速する際、左前輪が浮き上がる姿がヒントになったという。
JB23の時代、メーカー側で3度の仕様変更が行われたブッシュ。kudo-jの製品はJB23、JB64用ともにそれぞれ適したタイプを使い分けている。
下段のアームが右側用。kudo-jのリーディング/トレーリングアームはレッドと写真のガンメタの2色が設定されている。
すでにオフロードテストも繰り返し行なって来たという工藤さん。そこでやっぱり気になるのが、ブレーキLSDトラクションコントロールの有効性。トランスファーを4Lにシフトした際に作動するシステムのため、通常の走行条件下では使用する機会は少ないと思うが、雪道や泥濘地では間違いなく威力絶大とのこと。
「ただ、ハードなクロカンステージでは要注意。例えば、登りで対角線状にタイヤが浮いた場合、これまではアクセルワークで徐々にリアをずるずる流して行けば良かったけど、ブレーキLSDはスリップ自体を強力に規制して駆動がかかる車輪側のトラクションを維持するので、そのまま進んでオットット!という事態にもつながりかねません。くれぐれも過信は禁物です」。
さて、ここまで読んでもベースとしての完成度の高さは十分過ぎるほどのレベルにあることが分かるJB64だが、長い予約待ちを我慢して手に入れたからには、やはり自分流のカスタマイズを楽しんでみたいもの。その第一歩と言えばやはりリフトアップ。JB23では3インチクラスのアップ量も珍しく無かったが、工藤自動車がJB64用の足回りパーツの第一弾として製作したのは50㎜アップ(2インチ弱)のスプリング。
「JB64はJB23に対し、タイヤハウスの容量が大きくなっています。225サイズのタイヤなら、50㎜程度が最もまとまりが良いように思えます(好みはそれぞれですが)。あとはリフトアップに何を求めるか? 車高を上げれば足が伸びるワケではありません。
この50㎜仕様も高さだけを見れば控えめですが自由長が長く、3インチクラスのショック(試作品)を組み合わせているのでストロークは3インチ級です」。
もちろん、この控えめなアップ量でもアーム交換によるキャスター補正は不可欠。ちなみに純正アームで単純にスプリングだけを変更する場合、リフトアップは10〜15 ㎜程度が限界。
当たり前過ぎる話かも知れないが、見た目だけでなく加速やコーナリング性能への影響という点を考えても、サスペンションのモディファイは慎重に、というのが結論だ。
50㎜アップのスプリングの装着に伴い、前後アーム、ショック、ブレーキホース、ラテラルロッドなどを変更。ここからさらにロングショック化させる場合には、ミッション下のメンバーを干渉対策品(工藤自動車からも近日発売予定)に変更する必要がある。
センターのXメンバーの他、ミッション下、そしてフレーム最後端部と、JB23に対し1.5倍というねじれ剛性のアップ(メーカー公表値)は、サスペンションの適正な動作という点においてもメリットがある。工藤自動車ではさらにその特性をプラス方向に伸ばすべく、「いつも頭にクエスチョン」の姿勢を貫いている。
アドバイザー 工藤和彦さん
工藤自動車
モノ作りに対する多角的な視点と猛烈な好奇心はピカイチ。それゆえ、自分で自分をひたすら忙しくさせているという声も。リーフスプリングに関するノウハウも絶大なのだ。
●住所:福岡県北九州市八幡東区花尾町2-21
●☎︎093-681-4739 ●http://www.kudo-j.com
●営業時間:10:00〜19:00
●定休日:日曜・祝日/第3月曜
ハイパーレブ vol.235 スズキ・ジムニー No.5 2019年5月31日発売号より
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