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今やダンパーの必需品といえるほど装備率の高い減衰力の調整機構。サスペンションを購入する条件の一つにしているユーザーは多いが、フルに使いこなしている人は少ない。「買ってから一度も変更したことのない人だっています。開発している人間としては寂しいですね」と今回の先生であるブリッツの喜多さん。簡単そうでいて実は奥が深い減衰力の調整は、確かに使いこなすのは難しい。だが変更自体は誰でも行える。とにかく動かしてみることだ。「ウチのダンパーZZ‐Rは前後共に32段調整式で、出荷時には推奨値にしてあります」。まずはその状態を意識して乗って欲しいと喜多先生。“意識”することで「もっとスポーティにしたい」や「乗り心地をよくしたい」といった具体的な要望が生まれてくる。それが自分に合った減衰力を見つけるための第一歩だ。
基本的にスポーティにしたければ前を硬く、乗り心地をよくしたければ後ろを柔らかくしていく。通常の推奨値は真ん中の16段付近なので、いずれの場合もそこから5段、最大でも10段を目安に変更。その後に1、2段の微調整で理想に近づけていく。
極端に大きく変更するとバランスが崩れて判断がつきにくくなってしまう。推奨値は実走テストも行なっているので、大きくは外れていないのだ。つまり、減衰調整は好みや使い方を鑑みた最後の仕上げというわけだ。
調整したけど結局、推奨値に戻ったとしても無駄ではない。納得して使っているという自負が持てる。満足していても一度は動かして欲しい。そこから減衰力が見えてくる。
スプリングの動きを吸収するのがダンパーの減衰力の役割だ。ダンパー内部にはオイルが入っていて、その中でロッドにセットしたピストンが上下動を繰り返して動きを治めている。ピストンにはオイルの通路であるオリフィスが設けられていて、そこを塞ぐようにシムが数枚装着されている。オイルはシムを反らせながら流れる。その時に発生する抵抗が減衰の源だ。
ブリッツの場合、ダンパーの減衰力の調整はダイヤルを時計回りに締め込むほど硬くなる。そして数字が小さいほど硬い。つまり締め込んでいって止まったところが一番硬い1段だ。基本的にはそこから希望の段数まで戻して合わせる。調整する場合も現在の段数から希望の段数に直接するのではなく、ひとまず1段目にしてから合わせる。手間はかかるが、こうした方がより正確にセットできる。
最大まで硬くして希望の段数まで戻す!
ノーマルよりもレベルの高いスポーツテイストが味わえるのがサスペンション変更の醍醐味だ。一人でドライビングを楽しみたい場合は、フロント側の減衰力を硬めていこう。誰に気兼ねすることなく納得するまで調整だ。
フル乗車で長距離をドライブする場合、快適性を求めたいから柔らかくした方がいいと思われがちだが、実は逆だ。どうしても通常の減衰力では役不足。リア側を硬めていけば変更前の治りきれなかった動きが抑えられる。
人ばかりでなく荷物を満載する場合にも減衰力の調整は威力を発揮する。リアのカーゴルームに重たい荷物をたくさん載せれば当然、減衰力は不足する。こんな場合もリアを硬める。リアの動きが整って運転がしやすくなる。
自分に合った減衰力を効率よく見つけるための手法として、いつも通っているルートでフィーリングの違いを調べる場所を決めておくのがオススメだ。例えば段差やマンホール。そこがテストコースとなって、変更した減衰力の違いがわかりやすい。何度もやっていれば1段の違いさえもわかる上級者になれるのも夢じゃない。
ブリッツ 喜多先生
「減衰力の感じ方は人によって様々です。いくら他人が絶賛していても、自分が乗ったら不満があるってパターンは意外に多いものです。正解なんて決まっていません。自分が満足すれが正解です。推奨値だって絶対ではありませんからね。ちなみにブリッツの推奨値は純正タイヤを履いている状態でテストして決めているので、タイヤ&ホイールを換えているならば変更してみてください。不快な突き上げを感じれば弱める方向で、高速道路などでふらつく場合は硬める方向で調整するのが基本です。用途に合わせた調整がダンパーの能力をフルに引き出します」。失敗を恐れずにチャレンジだ!
減衰力の調整は車種によっては調整用ダイヤルが手の届きにくい場所にある。そんな不満に対応するためにブリッツでは室内で減衰力が調整できるダンパーZZ-RスペックDSCが用意されている。車速信号を入力すれば自動でも切り替わる。