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ライバルはタントやパレットだが、このNボックスはホンダらしい徹底したこだわりで作られている。実は、かつて一世を風靡したN360も、最初にキャビン(室内)を設計したという。そのN360のアプローチを踏襲して、とにかく居住スペースを広げる工夫を凝らした。
エンジンルームは極力コンパクトにし、それを全て居住スペースに充てる。エンジンそのものをコンパクト化するなど、実に70㎜もエンジンルームを小さくしている。そして、センターに燃料タンクを配置し、フラットなフロアを確保。
フロントシートとリアシートのスタンスを1150㎜とし、普通車のミニバンを凌ぐほどの広さを実現させている。リアシートはワンアクションで倒すことができるが、その状態で自転車をそのまま載せられる。
室内高は1400㎜もあり、子供なら立ったまま着替えができてしまう。大きく開くスライドドア、便利で多彩な収納ボックス類など、さすがに得意なホンダらしい配慮が見える。
DOHCとVTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)を組み合わせたエンジンは、その扱いやすさが際立っている。タウンユースなら充分なトルクとパワーを持っていて、街中の流れをリードできる実力がある。
乗り心地に関しては、通常のモデルとカスタムで足の味付けが少し異なっている。どちらも足がスムースに動いてゆったりとした乗り心地だが、カスタムの方がロール剛性が高く、反応が少し機敏で安定感も優れている。
ただ、室内長を大きく取るために、ホイールベースもギリギリまで大きくしており、その影響が少し出ている。小回りが効かない感覚というか、曲がりにくい印象を受けてしまう。
安定しすぎている感触はNボックスのすべてのモデルに共通していること。大きなクルマに乗っているような印象でもあり、これがママたちにどう受け止められるのか、が気になる。
ターボ仕様はトルクフルでスポーティなフィーリング
Nボックス・カスタムには、ターボエンジンを搭載した過激なモデルもある。出力は業界自主規制の64psだが、とにかくトルク特性がいい。
どうやらとてもレスポンスのいいターボを採用しているようで、低回転域からきっちりとトルクが出ている。大排気量エンジンに匹敵するようなトルク感で、とにかく扱いやすいのが最大の特徴だ。
しかも、そのパワーに合わせてセッティングされた足もいい。僅かに低重心化が施され、足自体も固められているようで、ルックスに似合わずスポーティな感覚なのだ。
ただ、ちょっとロングホイールベースすぎるようで、ハンドリングは決してシャープではないが。ちなみに、エコスイッチを押すとパワーが抑えられるが、その状態でも通常のNAモデルよりパワフルなくらいだった。
小排気量エンジンとターボの組み合わせは、実は欧州が省燃費化の技術として注目しているもの。ホンダは、ターボの技術を違うカタチにするつもりかも。
※記事の内容、価格、スペック等は2011年12月のデビュー当時のものです。その後の一部改良等で変更になっている可能性もあります。
※スタイルワゴン2012年3月号より