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ホンダの場合、日本のマーケットにおいてはインサイトやプリウスなどのように、そのモデル=ハイブリッド車ではないことのアピールの弱さをシビックハイブリッドで経験しているだけに、フィットHVの場合にはどうなのか気になるところではあったのだが、どやら杞憂だったようだ。
エコカー、ハイブリッドカーに対する世の中の関心度の高まりといった時代の流れもあるだろうが、なによりフィットというモデル自体の人気、魅力、そしてプライス設定などが大きく影響しているに違いない。
今回のマイチェンによって標準車/15X/RS/ハイブリッド各モデルのエクステリアの差別化がより鮮明になったわけだが、メッキ&クリアブルーを巧みにあしらったフィットHV独自の演出は好感度が高い。だが、それ以上にHVであることを実感するのは運転席に乗り込んでからだ。
シャンパンメタリックのHV専用ダッシュパネルもさることながら、エコガイドなどを表示してくれるマルチインフォメーションディスプレイを備えたHV専用のメーター。
フード周りのデザインなどは他のモデルと大差ないのだがブルーの透過照明に照らし出されるだけでも印象はずいぶん異なるから不思議だ。
そしてガソリン車との違いを感じる最たるはもちろん走り。発進時、加速時のフィールは、さすがにモーターパワーがプラスされるHVならではと思わせるもの。
フィットの車格、1・3ℓの排気量から想起される予測を間違いなく上回る低中域の豊かで滑らかなトルクはHVならではのフィール。同日試乗したRSのようなキレのあるパワー感とは異なり、トルクで車速を上げてゆく感覚だ。
逆にガソリン車に対するHVのハンデといえばボディ重量。ガソリン車のモデルによって異なるが、50㎏~100㎏以上、HVの方が重い自重を抱えている。
それでも発進~加速~巡航と、ことクルマを前に走らせるための動力的な面では、いわずもがなでハンデを意識することはない。違いを意識するのはクルマを振った際のハンドリングやその挙動、コーナリング時だ。
たとえば中・高速コーナーでは横Gのかかり方に応じてそれなりのロールを許す。これは標準車も同様。ここでRSのスタビリティの高さを引き合いに出さしてしまったら元も子もないが、標準車と比べてもHVの方がロール制御に苦労している感ありで、修正舵に対する応答性も甘くなりがちだ。こんなシーンでは標準車の方が圧倒的に動きが良い。
といっても、以前試乗したインサイト(マイチェンで良くなったらしい)のような妙な前後バランスではなく、思った以上にリアは安定している。ラゲッジフロア下にはハイブリッドのシステム、バッテリーユニット(IPU)が置かれているため、重量だけでなくボディバランスもガソリン車とは異なるわけだが、リアサス取り付け部の強化やフロントスタビ径アップ、リアスタビ追加といった対応が少なからず効いている。
フィットHVはモーターのみの走行領域がインサイトよりも増やされているのでそれもチェックしてみた。ペダルに足を乗せる程度のアクセルワークで「EV」表示を確認しながら走ると40㎞/h弱程度までスルスル走れる(ちなみにエアコンはオフ)。
もっともこうした走り方を常時続けるのは現実的ではないし、バッテリー残量にも左右されるが、渋滞やストップ&ゴーが多いタウン領域での燃費向上に直結していることは間違いない。
CR-Z譲りのカチッと決まるシフトフィール
6速MTモデルは、CR-Z譲りのカチッと決まるショートストロークのシフトフィールとギア比の関係からか、頼もしい加速感を得られる点が好感。CVTモデルはイージーにスポーツフィールが楽しめる。どちらもスタビリティの高さだけでなく、乗り心地の良さとフラット感に優れた乗り味の良さがあり、日常ユースでも快適。パワステの手応えも良好。その上、ワンクラス上のグレード感の高さも感じさせてくれる秀逸な出来映えだ。
素性の良さを、あらためて感じさせてくれた
何かが劇的に変わった! という印象は薄いが、あらためてフィットというクルマの素性の良さを感じさせてくれたのが標準車。そんな中でも進化を感じたのはステアフィール。電制パワステのためと思われる違和感が減り、操舵時の手応えがこれまで以上にリニアになった。高速走行時のフィールもより自然に。ハイブリッドと比べると、ボディ重量が軽い分だけ軽快な走りの良さがある。これは標準車だからこそのアドバンテージ。
HYBRID
RS
13G
※記事の内容、価格、スペック等は2010年10月のデビュー当時のものです。その後の一部改良等で変更になっている可能性もあります。
※スタイルワゴン2010年12月号より
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