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筆者が未就学児童のみぎり、自動車はほとんどがマニュアルミッションでした。
幼児はクルマをぶーぶーと呼びますが、エンジンの音も大きく、まさに「ブーブー」でした。その頃、走っていく自動車の音が「ぶうぅーっ、ぶぶぶううぅぅーっ、ぶぶぶぶぶー…」と、連続でなくて切れ切れに低くなるのが子供心に不思議でした。スピードはどんどん速くなっていくのに、なんでエンジンの音はもっとぶわーって上がりっぱなしにならないんだろう、って。そう、中身は良くわからないままに「シフト」というものの存在を予感していたんですね。また、停車中のクルマのエンジンがぶるぶると回っているのも不思議でした。エンジンが回っているのに、なんで止まっていられるんだろう。そう、中身は良くわからないままに「クラッチ」というものの存在も予感していたのですね。我ながらなかなかの洞察力、自分で自分を褒めてあげたいです。
大人になって、教習所に入って「シフト」や「クラッチ」と向き合うことになります。当然その頃にはもうそれらの仕組みは知っていましたが、実際にやってみるとなかなか難しいものでした。
まだ「オートマチック限定免許」などなかった時代なので、マニュアルの操作を避けて通るなんて考えられなかったことで、かえって雑念が入らなくて良かったのかも知れません。「アクセルとクラッチの調和」なんて書かれた教則本を見ながら試行錯誤したのをおぼえています。
その後、永らく家族共用のクルマに乗ることになるのですが、それらはずっとオートマチック車でした。そして十数年後、マニュアル車の運転を忘れた頃に友達から5万円でミラ・ウォークスルーバンを買いました。三十歳にしてマニュアル車公道デビューです。普段から大型バイクに乗っていたので、クラッチの感覚にはわりとすんなり馴染めました。信号で止まる際にクラッチを切り忘れてエンスト、というのはたまにやりましたが。