今冬の2月は強烈寒波が2回も襲来し、単月では多くの地点で平均気温は平年より低く、降雪量は平年よりかなり多くなりました。ただ、12月~2月の冬の期間を北陸全体で見ると、平均気温・降雪量のいずれもまさかの平年並みとなりました。地球温暖化が進み偏西風の蛇行が大きくなると、極端な気象がおこりやすくなるという研究もあります。次第に暖候期に入りますが、短時間強雨や極端な少雨、異常高温や日照不足等が今後も起こり得るものとして備えていきましょう。

●平坦な道のりではなかった「3か月での平年並み」

グラフは、北陸4県の各気象台及び相川、高田、伏木、輪島、敦賀などの観測値の平年差(比)を計算し、これらを平均した値を示しており、緑色の折れ線は5日毎の平均気温平年差、青い棒グラフは5日毎の降雪量平年比をあらわしています。

1月20日は二十四節気の大寒、暦の上では1年で最も寒い時期にさしかかりますが、1月19日~24日頃にかけて、北陸三県(西部)を中心に平均気温は平年よりかなり高く、さくら(ソメイヨシノ)が開花する頃の陽気の日もありました。この間、降雪量平年比は0%の日が続きました。

その後二十四節気の立春の翌日の2月4日からは、立春大寒波襲来となり、各地で大雪による影響が長引きました。降雪のピークは2月4日~8日にかけてとなり、7日の新潟県と石川県には「顕著な大雪に関する気象情報」も発表され、降雪量平年比は青色の棒グラフで示すように最大で550%にも達しました。

その後は一旦昇温しましたが、17日夜からは、立春大寒波に匹敵する寒波が再び襲来、地上付近の下層寒気は立春大寒波の時よりも強く、緑色の折れ線で示す平均気温平年差はマイナス3.5度にも達しました。また、石川県で再び「顕著な大雪に関する気象情報」が発表された22日頃は、青色の棒グラフで示すように、降雪量平年比が再び550%以上に達する降雪の強まりがありました。

●上空500hpaの高度場から見た実況

図は、今冬の北半球における500hpaの高度と平年偏差を示したもので、左は大寒の頃、右は立春大寒波の頃のいずれも五日間の状況です。

上図の左側の500hpaの高度と平年偏差図では、日本付近は暖色系の領域で気圧が高く北極圏から寒気が流れ込みにくい気温が高い領域に対応しています。このため、1年で最も寒い時期にさしかかる頃ではありましたが、北陸西部を中心に平均気温は平年よりかなり高く、1年で最も寒い時期とは思えないような陽気の日もありました。

一方、上図の右側では、日本付近は寒色系の領域で気圧が低く北極圏から寒気が流れ込みやすい気温が低い領域に対応しています。このため、立春を過ぎる頃ではありましたが、立春大寒波襲来となり、各地で大雪による影響が長引きました。

●複合災害 大雪と津波の同時発生? 日頃から最悪を想定した備えを

複合災害は、令和6年能登半島地震の後の復旧・復興中に起こった線状降水帯による大雨災害や、複数の災害がほとんど同時に起こることも含まれます。

「寒波襲来による大雪や低温」「台風の接近に伴う大雨や暴風」等はある程度の予測が可能で事前の対策を講じることが出来ますが、地震の際には同じようにはいきません。

今冬の大寒波のように不要不急の外出を控えることが求めらえるような大雪が予想される中、突如大地震が発生し、沿岸部で津波の被害が予想された場合、どのように身の安全確保をはかれば良いでしょうか?

屋根に積雪があれば家屋倒壊の危険度も高まります。津波からの避難は徒歩が原則ですが、仮に多くの人が車で避難をした場合、途中で渋滞や立往生で先に進むことが出来なくなってしまうことがあるかもしれません。場所によっては避難経路の途中で雪崩が発生したり、道路の陥没で路面の安全確認が十分に出来なくなることもありそうです。避難時には自宅の火災予防の措置、避難所での食料の確保、防寒対策や感染症対策の備えも必要となるでしょう。

明治から昭和にかけての物理学者であり防災学者でもあった寺田寅彦は「災害は忘れた頃にやってくる」という警鐘を鳴らしていました。ただ、近年は悲しいかな、「災害は忘れる前にどこかで発生してしまう」のが現状となっています。

いざという時に慌てず冷静に身の安全確保が出来るように、家族や地域コミュニティを核として、日頃から最悪を想定した事前の減災や防災対策をすすめておきましょう。

情報提供元: tenki.jp日直予報士