北陸地方では、7月は梅雨の最盛期~末期の大雨に注意が必要です。また、7月下旬から8月を中心に猛暑の予想で、熱中症などの体調管理や農作物の温度管理に十分注意して下さい。

●1)3か月予報 7月は梅雨の最盛期~末期の大雨 8月を中心に猛暑

6月20日、新潟地方気象台より、福井・石川・富山・新潟の4県を対象とした「北陸地方の向こう3か月の天候の見通し」が発表されました。

そのポイントの一つ目は「暖かい空気に覆われやすいため、向こう3か月の気温は平年並か高い」ということです。

その背景には、
①地球温暖化の影響により、全球で大気全体の温度が高く、特に北半球の亜熱帯域では顕著に高くなっていること。
②冬に終息したラニーニャ現象の影響等が残ること、及び、正のインド洋ダイポールモード現象の発生により、積乱雲の発生がフィリピン付近から西部太平洋赤道域にかけて多くなり、太平洋高気圧が日本の南で西へ張り出しやすく、チベット高気圧が東側で強い、7月下旬から8月を中心に平均気温は高く、猛暑が予想されるということです。


二つ目のポイントは、「前線や低気圧の影響を受けやすいため、向こう3か月の降水量は平年並か多い」ということです。

現在発生しているエルニーニョ現象の影響で、偏西風は平年よりやや南寄りを流れ、北陸地方ではその影響を受けやすいでしょう。南から暖かく湿った空気が流れ込みやすく、7月を中心に前線や低気圧の影響を受けやすいということです。北陸地方では、梅雨の最盛期から末期にあたり、特に、日本海から北陸付近に東西方向に前線が停滞する場合や、日本海から前線が南下する際を中心に、大雨に注意・警戒が必要ということです。

●2)エルニーニョ現象下での梅雨明け速報は?  直近の3シーズンの事例では「梅雨明け二日」「梅雨明け三日」「梅雨明け特定できず」

6月9日、気象庁から、エルニーニョ現象の発生と、今後、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(90%)旨の発表がありました。今夏の熱帯域は、例年になく複雑ですが、過去、夏の期間にエルニーニョ現象が発生していた場合の梅雨明けについて、直近の2015年、2014年、2009年について調べました。

一般に、梅雨明け直後は、夏の高気圧が北へ張り出しを強めて本州付近をすっぽり覆い、安定した夏空が続くとされています。「梅雨明け十日」とは、このことを端的に表しています、直近の3シーズンを見ると、「2015年は概ね梅雨明け2日」、「2014年は概ね梅雨明け3日」、「2009年は梅雨明けが特定されず、特定できない程、天気がいつまでもぐずついていた」と言えそうです。その一方、2021年は平常年で、典型的な「梅雨明け十日」の状況になっていたようです。

ですから、仮に梅雨明け速報の発表があったとしても、今夏は安定した夏空は続かず、後日見直しの確定段階で梅雨明け速報日が変更される可能性も考えられます。

●3)市街地では雨水の排水能力を超える「内水氾濫」が増加傾向 専用のハザードマップも確認を

外水氾濫とは、河川等の堤防から水があふれる、あるいは堤防が破堤した場合に起こる洪水などをいいます。その一方、内水氾濫は、市街地に降った雨が雨水の処理能力を超える、あるいは川があふれかかっていてポンプで水を捨てられず逆流してくるような状態をいいます。

近年、都市化の進展や局地的な短時間強雨の増加に伴い、雨水の排水能力を上回る「内水氾濫」が各地で頻発しています。昨夏の8月13日の富山市内では、富山市が独自に設置した雨量計で1時間に98mmの猛烈な雨を観測しました。これは、現場から直線距離でわずか5km程度しか離れていない気象台の「1時間最大で29mm」の3倍を超える雨が一気に降ったことになります。現場では、雨水の排水が追い付かず、周辺では小学校や住宅で床上や床下浸水があった他、地下道の通行止め等もありました。

ハザードマップは、お住まいの自治体や地域毎に「洪水(外水氾濫等)」「土砂災害」「内水氾濫」「津波」「火山」等、様々あります。予想最大雨量の見直しや新たに内水氾濫をおり込んだ浸水想定など随時アップデートされています。常に最新のものを確認するようにして下さい。

日頃から梅雨の晴れ間等は、側溝や用水路の清掃を習慣付ける、出水期だけでも重要な資産を少しでも高い安全な場所に移動できないかを検討するようにして下さい。

●4)過去 北陸地方に接近した台風は8月と9月が最も多い 梅雨明けしても雨の季節は終わらないことに留意

気象庁は、台風の中心が、新潟県・富山県・石川県・福井県のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合を「北陸地方に接近した台風」としています。1951年から2022年までの72年間の統計では、2004年(平常年)が最も多い9個となっています。一覧を見ると、平常年の接近が多いようにも思われますが、ランキングの下位にも平常年が多くなっています。これは平常年が最も母数が多いこともあり、平常年、エルニーニョ年、ラニーニャ年毎の有意差はなさそうです。

台風が日本海コースの進路を取る場合には、フェーン現象が発生して高温になることもあります。昨年の9月6日は、金沢で最高気温が38.5度と120年前の1902年9月8日の記録に並び、通年で観測史上1位タイを記録しています。今年も台風による影響があるものとして、大雨への備えに加えて高温による熱中症への対策なども怠りなくお願いします。

●5)電気料金値上げに対応した節電テク 風を読んで涼をとれるケースも

北陸地方は8月を中心に厳しい暑さが予想されています。このため、エアコンを適切に使用して熱中症を予防することは大切です。一方、北陸地方は日本海に面し、夏場でも気圧配置により北風(海風)が卓越すれば内陸よりも相対的に涼しい空気が流れ込むことがあります。

そこで、自然の風を上手に利用しながら涼をとる方法を考えてみましょう。北陸地方では、高気圧が日本海に中心をもつ気圧配置の場合、高気圧は時計回りの風となるため、北よりの風(海風)が卓越します。

図の左は2023年6月19日15時の地上天気図、右の実況は当日の富山と福井の風速(m/s)・風向(16方位)・気温(℃)の1時間値です。両地点ともに日中の時間帯である9時~18時を中心に北よりの風(海風)がやや強まり、風速5m/sを超える時間が長くなっています。北東風が陸風になる地点もある等、地域特性は異なり気温が下がらない地点もありますが、風の通り道を作り体感温度を下げる効果は期待できそうです。

この時期は、帰宅時に屋内に熱気がこもっていると、即「エアコンのスイッチをon」としがちですが、その前に天気図と風向きをチェックする習慣を付けましょう。「地上天気図で日本海に高気圧がある場合は涼をとれるチャンスあり」として、注目して下さい。仮に上手に風が利用できれば、エアコン要らずで涼をとるのが可能となることもありそうです。

情報提供元: tenki.jp日直予報士