盛り上がりを見せる野球の国際大会 「気象」の面から考える
今月8日に開幕した野球の国際大会。日本代表は9日から予選ラウンドを戦い、きのう16日にはイタリアに勝って準決勝進出を決めました。今回は、この大会で使用された唯一の屋外球場での試合を、気象予報士の視点から分析してみました。また、決戦の地「マイアミ」の天気と、選手に及ぼす影響について考えました。
●唯一の屋外球場での試合と気象の影響を考える
台湾にある、台中インターコンチネンタル野球場は、台中市の郊外にある天然芝の野球場です。球場規模は、両翼325フィート(およそ99.1メートル)中堅400フィート(およそ121.9m)で、兵庫県のグリーンスタジアム神戸(両翼およそ325.1フィート:99.1メートル)(中堅およそ400.3フィート:122メートル)と同じくらいの大きさです。
現在開催中の国際大会で使用された全4会場のうち唯一の屋外球場で、屋根は内野スタンドにしかなく、最も気象条件に左右されやすい球場であるといえます。
この球場は、ホームベースから北東の方角にフェアゾーンが広がっていて、南西風が吹くと、ボールが風に乗って飛距離がのび、ホームランになりやすくなります。
また、北よりの風が吹いた場合はレフトからライトに向かって風が吹くため、左打者が有利になり、南よりの風が吹いた場合はライトからレフトに向かって風が吹くため、右打者が有利になるという特徴があります。
●興味深い12日の台中の天気とホームラン カギは北風に
台中市で行われた予選ラウンドは大混戦となり、最終日の12日まで、どのチームが決勝トーナメントに進むのかわからない状態になりました。
その、12日の台中市は北風が強めに吹いた一日だったことがわかりました。当日の気象データと、打者の概要、ホームランの方向をまとめると以下になります。
●3/12
・第1試合 13時~ 【晴時々曇り・25℃・北4~6m(左打ち有利)】
1本目 右打者 右中間 ギリギリ
2本目 左打者 ライト
・第2試合 20時~ 【曇・20℃・北6m(左打ち有利)】
3本目 右打者 ライト ギリギリ
北風・・・ライト方向への風(左打ち有利)
南風・・・レフト方向への風(右打ち有利)
南西風・・・ホーム⇒バックスクリーン(全打者有利)
※台中市の気象データはtenki.jp世界天気を参考にする。
※打席の左右、ホームランの方向、スタンドインがギリギリだったかどうかは、筆者が様々なスポーツニュースの記事を参考にする。
大陸から高気圧が張り出した12日は台中市で北風が強まり、第2試合では平凡なセカンドフライが風に流されるシーンも見受けられました。
この日の1本目と3本目のホームランは、打球がレフト方向に飛びやすい右打ちのバッターから放たれました。その打球は北風の影響でライト方向に流され、ギリギリでスタンドに入ったものになりました。
一方で、打球がライト方向に飛びやすい左打ちのバッターが放ったこの日2本目のホームランは、どんどん飛距離がのび、打球は悠々とスタンドに飛び込んでいきました。12日の試合では、強い北風と試合内容の関係性が現れ、気象予報士の目線から見てとても興味深いものになりました。
●決戦の地「マイアミ」の天気は?
国際大会を勝ち進んでいる日本代表は、現地20日の夜(日本時間:21日の朝)に、アメリカ・フロリダ州のマイアミで準決勝に挑みます。
フロリダ州のマイアミは亜熱帯性気候に属し、沖縄県那覇市とほぼ同緯度にあります。暖かい海流であるメキシコ湾流の影響で、年間を通して温暖なのが特徴です。
マイアミの最新の予報では、決勝の日にかけて雨が降りやすい天気が続くでしょう。準決勝が行われる現地20日の最高気温は26℃、決勝が行われる現地21日の最高気温は27℃の予想です。
温暖な気候であるため故障のリスクが減ることが考えられますが、湿度が高く、ムシムシとした空気が不快に感じられるでしょう。
試合開始は現地時間の夜とはいえ、空気がカラッとして、かつ朝晩は空気がヒンヤリする東京に滞在していた選手にとって、渡米後のコンディション調整に影響が及ぶ可能性があります。
準決勝や決勝で使用される球場は開閉式の屋根がついていて、真夏の晴れた日くらいしか試合中に開けることはなく、今大会では風や雨が影響することはなさそうです。そのため試合当日よりも、渡米後から試合前日までの期間がカギになるように思われます。
今回の分析や予想は気象の面から見たものであり、実際の試合はどのような結果になるのかはわかりません。
読者の皆さんには、気象と野球の関係について、あくまでも「参考程度」にとらえて頂ければと思います。