今年の梅雨末期は、長く降り続く雨で、熱海市など甚大な災害が発生しました。梅雨が明けると台風シーズンに入り、台風8号は、東から日本に近づく異例の進路をとりました。7月の振り返りと8月の見通しです。

●梅雨末期の大雨

6月30日から7月12日にかけて、前線は本州付近に停滞しました。
7月1日は、前線に吹き込むモンスーンの風と太平洋高気圧の周辺の風がぶつかり、伊豆諸島で雨が強まりました。線状降水帯が確認され、新島空港で、1時間降水量79.5ミリ、日降水量332.0ミリを観測し、いずれも2003年の統計開始以来、年間の1位の値を更新しました。
12日にかけては、関東南部や東海を中心に、雨が長く降り続き、神奈川県箱根町では、6月30日から7月12日にかけての降水量の合計は911.5ミリに達し、7月平年の降水量のおよそ2倍になりました。土石流が発生した静岡県熱海市に近い熱海市網代では、7月1日から3日にかけて、1時間降水量30ミリ以上の雨が観測されなかったにもかかわらず、3日間の降水量の合計は411.5ミリと、7月平年の降水量のおよそ1.7倍になりました。近年の梅雨末期の大雨は、2020年の熊本豪雨、2017年の九州北部豪雨など線状降水帯による集中豪雨がありますが、東海を中心とした大雨は、長く降り続く雨で、甚大な災害が発生しました。
7日に島根県と鳥取県で、10日に鹿児島県で、線状降水帯が確認されました。
線状降水帯とは、積乱雲(発達した雨雲)が、線状に次々に発生して、ほぼ同じ場所を通過・停滞することで作り出される、非常に強い雨のエリアです。

●梅雨明け 四国が最も遅く 四国単独で最も遅いのは統計開始以来初めて

沖縄の梅雨明けは2日ごろで、平年より11日遅くなりました。そのあと、7月中旬にかけて、奄美、九州南部、九州北部、中国、北陸と、次々に梅雨明けし、ここまでは、平年と大きく変わらない盛夏の到来になりました。このあとの梅雨明けは、夏の太平洋高気圧の本州付近への張り出しは弱く、西から順番とはなりませんでした。16日ごろ、関東甲信と東北南部、東北北部で梅雨明けし、東北北部では、24年ぶりに四国や近畿、東海より早い梅雨明けになりました。17日ごろ、東海と近畿、19日ごろ、四国が梅雨明けになりました。四国が単独で最も遅くなったのは、統計開始以来初めてです。
※梅雨は季節現象であり、梅雨の入り明けには、平均的に5日間程度の「移り変わり」の期間があります。なお、梅雨入り・梅雨明けの発表は速報値で、春から夏にかけての天候経過を考慮して再検討され、見直されることがあります。

●台風接近・上陸 台風8号は宮城県に統計開始以来初めて上陸

18日、日本の南で台風6号が発生しました。台風6号は、発達しながら北上し、大型で、強い勢力になり、先島諸島に接近しました。台風6号は、停滞したり、比較的動きが遅く、およそ5日間にわたって沖縄地方に接近しました。久米島空港では、23日は最大風速22.8メートル、日降水量117.5ミリを観測、24日は最大風速27.2メートル、日降水量134.5ミリを観測するなど、暴風の時間が長く、雨量が多くなりました。
23日、南鳥島近海で台風8号が発生しました。台風8号は、日本の東まで北上し、上空の寒気を伴った反時計回りの風の流れや、北日本付近に張り出す太平洋高気圧などの影響で、進路を西よりにとりました。28日6時に、宮城県石巻市付近に上陸。宮城県への上陸は、統計開始以来初めてです。そのあと、東北を横断し、28日15時に、秋田沖で温帯低気圧に変わりました。岩手県住田町では、27日から30日までの降水量の合計は192.0ミリで、4日間でおよそ平年7月ひと月分の雨量になりました。
台風から変わった低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、上空には寒気が流れ込んでいたため、関東や東海を中心に、大気の状態が不安定になり、局地的に雨雲が発達しました。静岡空港では、29日、1時間に88.0ミリの猛烈な雨を観測しました。

●北海道 高温少雨 記録的な暑さ

北海道付近の海面水温が平年より高いなどの影響で、北海道では記録的な高温になりました。北海道上川地方の旭川市では、最高気温が13日から31日にかけて、19日連続で30℃以上になりました。旭川市では、統計開始の1888年以降、これまでの30℃以上の連続の最長は、17日連続(1916年7月24日~8月9日)で、この記録を105年ぶりに更新しました。19日連続したうちの7日は、35℃以上の猛暑日になりました。
北海道付近は高気圧に覆われた日が多く、雨の量が少なくなりました。7月1日から30日までの降水量の合計は、北海道では、平年の20%以下の所が多く、札幌市では、7.5ミリで、平年のわずか9%です。九州北部も、20%以下の所があり、福岡市では、45.5ミリで、平年の16%です。

●8月 お盆には夏空は安定 とても厳しい残暑に

8月上旬は、湿った空気の影響を受けやすいでしょう。九州から関東にかけて、変わりやすい天気で、雨雲や雷雲がわきやすいでしょう。8月中旬は、夏の太平洋高気圧が本州付近に張り出しを強める見込みです。夏空は安定するようになるでしょう。8月下旬にかけて、厳しい残暑が続く見込みです。

情報提供元: tenki.jp日直予報士