【甲子園】もし今夏大会が7回制なら…日大三は決勝進出ならず それでも8回以降の逆転はわずか3度
<検証>
沖縄尚学の夏初優勝で幕を閉じた第107回全国高校野球選手権。史上初の夕方開会式や「朝夕2部制」の拡大など、高校野球は変わりつつある。来春センバツからは指名打者(DH)制も導入される中、今も議論が続いているのが「7イニング制」だ。今秋の国民スポーツ大会(国スポ)では国内主要大会で初めて導入される7イニング制。もし今夏の甲子園で導入されていたら勝敗はどう変わっていたのか、独自検証した。【企画・構成=林亮佑】
◇ ◇ ◇
変わりゆく高校野球の中で、来春センバツからはDH制が導入される。現場では好意的に捉える指導者も多い。一方で「7イニング制」には否定的な意見が多い。開星の野々村直通監督(73)は「7イニングになったら野球見ません」ときっぱり。県岐阜商の藤井潤作監督(53)は「0-0で3回から始まる感覚で臨まないとエンジンが入らないんじゃないか」と話すなど、戦い方に大きな変化をもたらす可能性がある。
宮崎で開催中の新人大会では県内の公式戦で初めて7イニング制が導入されている。年代別の国際大会ではすでに実施されており、9月5日に開幕するU18W杯は7イニング制。9月末に開幕する国スポでは国内主要大会で初めて7イニング制で実施される。
そこで今夏の甲子園で7イニング制を当てはめてみると、意外なデータが見えてきた。広陵の不戦敗を除く47試合のうち、7回までの勝敗と最終的な勝敗が逆になったのはわずか3試合。確率にすると約6%にとどまったのだ。
1つは史上最遅開始&終了になった綾羽-高知中央。ビハインドの綾羽が9回に追いつき、10回に勝ち越した。2試合目は京都国際-尽誠学園で、京都国際が8回に逆転して勝利。3試合目は日大三-県岐阜商で、8回に日大三が追いつき、10回に勝ち越した。
勝負の世界で「たられば」の話は禁物だが、もし7イニング制が導入されていたら綾羽は学校初の甲子園1勝は持ち越しとなっていた。京都国際も早期敗退。日大三は決勝に進出できず、県岐阜商が日本一になっていた可能性もある。
7回で同点だったのは6試合で、沖縄尚学-仙台育英など印象に残る試合もあった。7回制にするとドラマチックな展開になりやすい延長戦の割合も増えると予想される。ただ、逆転まで結びつけるドラマを起こしたゲームは印象よりも少なかった。
ちなみに、全試合のイニング別得点を出すと、最も多く点が入ったのが5回で54点。次いで1回と8回の40点だった。序盤、中盤、終盤と3度の山が訪れたが、7イニング制になると終盤の山はどうなるのか。試合運びが変わることも予想される。
高校野球はトーナメントのため、1試合でも結果が変われば、優勝校が変わる可能性も十分にある。それも面白さの1つだろう。7回制の議論は、今年中に対応策がまとまる予定。その前に国スポでの試験導入で、さまざまな面から検証していく必要がある。