【甲子園】入退院を繰り返していた少年が大舞台に…聖光学院・大嶋哲平「今度は人の命救いたい」
<真夏のライラック 東北編:聖光学院・大嶋哲平投手(3年)>
<全国高校野球選手権:山梨学院6-2聖光学院>◇12日◇2回戦
夏の地方大会から本紙高校野球面で掲載してきた、敗れたチームにあるドラマにスポットをあてた企画「真夏のライラック」。今回は「東北特別版」として全6回に分けて連載する。第1回は聖光学院(福島)のエース大嶋哲平投手(3年)。初戦で4強入りした山梨学院に敗れ、初戦で涙をのんだ。だが、昨年の明治神宮大会、今春センバツに続き、チームのために腕を振るエースの姿は最後まで頼もしかった。
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「日本一」への夢は初戦で散った。1-6で迎えた9回。「この仲間なら絶対にやってくれる」。大嶋はベンチから逆転を信じ、見守った。連打と相手のミスで無死満塁の好機。だが、反撃及ばず1点止まり。最後の夏が終わった。「もうこの仲間と野球ができないのが一番悲しいです」と涙があふれた。
「甲子園の借りは甲子園で返す」。これが口癖だった。今春センバツでは浦和実(埼玉)に延長10回タイブレークに8失点し、準々決勝で姿を消した。「もう負けて、仲間が悲しむ顔は見たくない」。この夏は頂点からの景色を笑顔で見るつもりで挑んでいた。
打線は大会屈指の好投手、山梨学院・菰田陽生を前に6回まで無安打。それでも、0-1の7回に1点をもぎ取り、試合を振り出しに戻した。「新チームが始まってから、自分がどれだけ点を取られても、食らいついてくれたので。(野手陣は)本当に心強くて、頼もしい存在でした」。7回まで2失点と踏ん張ったが、8回につかまり4失点。打線の援護に加え、序盤から仲間の好守備にも助けられた。だからこそ粘りたかったが、力尽きた。それでも、最後までマウンドに立ち続けた。
高校野球には幕を下ろしたが、人生はまだまだ続く。将来の夢は救急救命士。小学校入学前は肺炎で何度も入退院を繰り返していた。当時は想像すらできなかった大舞台に立った。「昔は病院暮らしだったり、救急車にもお世話になったことがあったので、今度は自分が人の命を救いたいです」。聖光学院を守り続けてきたエースの次は、命を守る頼もしい存在へ-。涙を拭った。【木村有優】