新小結で臨む場所。初日から黒星続きだった琴ノ若に焦りはない。その胸の内を表すような取り口を見せた。 高安に先手を奪われたものの、右四つで胸を合わせた後はじっと我慢。1分を過ぎ、左から振って攻めに出ると、勝機を逃さずに押し出した。「強引に動いて墓穴を掘っても意味がない。落ち着いて攻めた」。冷静さを失わず、初白星を挙げた。 母方の祖父は2007年に他界した元横綱琴桜で、父は師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)。昨年は番付運にも恵まれず、新三役を目前にして足踏みしたが、「その分、上位で戦える力を付けた。プラスに考える」。有望株として周囲の期待も大きい中、「下手に焦って中途半端な相撲を取るのが一番良くない」と言い、出世より日々の勝負に集中する。 昨年の秋、九州場所は序盤の黒星先行から巻き返して勝ち越しており、その経験も生かしたいところ。「始まったばかりで終わりではない。気を引き締める」。負けて焦らず、勝って浮かれず。25歳にして、一喜一憂しない心が大きな武器だ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕琴ノ若(左)は高安を押し出して初白星=12日、東京・両国国技館