無我夢中で駆け抜けた一年の先に待っていた新小結の地位に、若元春はまだ戸惑いを隠せない。弟は関脇若隆景。1991年九州場所の若花田と貴花田以来の兄弟三役となり、初場所(8日初日)に向け、「何とかしがみついて、弟の足を引っ張らないようにしたい」と謙虚な抱負を述べた。 昨年は1月の初場所で遅咲きの新入幕を果たし、5場所で勝ち越し。7月の名古屋場所では、横綱照ノ富士に得意の左四つで大善戦した。相手にも研究されるようになり、「左四つに組むために、いろいろ考えていかないといけない」。さまざまな力士が出稽古に来る荒汐部屋で、立ち合いから突っ張ったり、おっつけたりと工夫を重ねる。 祖父は元小結若葉山。長兄には幕下若隆元がおり、本名の姓から「大波3兄弟」と呼ばれる。自他ともに認めるのんびりした性格もあり、幕下で足踏み。「相撲はもともと好きじゃなかった。兄と弟がいたからこそ、何とか続けてきた」と笑う。 三役にたどり着いても、弟とは立場が違うと考えている。「自分は足元を見ている。あいつはもっと先(大関昇進)を見て歩いているから」。マイペースを貫き、肩の力を抜いて臨むつもりだ。 番付の重みを考え過ぎず、「納得のいく相撲を一番でも多く取りたい。内容を考えていきたい」と期する29歳は無欲を強調。その先に3場所連続の2桁白星が見えてくる。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕ぶつかり稽古に励む新小結の若元春(左)=2022年12月22日、東京都中央区の荒汐部屋