ノルディックスキー・ジャンプ女子のワールドカップ(W杯)は12シーズン目を迎えた。近年は各国の競技力が底上げされ、W杯で最多63勝と総合優勝4度を誇る高梨沙羅(クラレ)も簡単に勝てなくなった。現場を統括する国際スキー・スノーボード連盟(FIS)の吉田千賀レースディレクターがインタビューに応じ、技術の向上や、失格者が続出して注目された2月の北京五輪後の取り組みについて語った。 女子のW杯が始まった2011~12年は、個人戦全13戦がヒルサイズ(HS)の小さいノーマルヒルで行われた。今季は26戦のうち半分がHS130~140メートル台のラージヒルで開催。来年3月には女子初となる巨大なフライングヒル(HS240メートル)の大会がノルウェーで予定されている。 「最初の頃のW杯は、大きい台で飛ぶ時に周囲から『気を付けないと』という目で見られていた。今は難しい台でも問題なく、しっかり飛べる。技術の向上は驚くほど」と吉田さんは話す。 例えばリレハンメル(ノルウェー)のノーマルヒルで行われた大会を比べると、11~12年は助走路が83メートル台になるようスタートゲートが設定されたが、似たような環境での今季の予選は75メートル台だった。踏み切りや空中での技術が上がり、短い助走距離で遠くまで飛べるようになったと言える。 ▽失格防ぐ取り組みも ルール改正など競技環境の整備も進んできた。北京五輪混合団体ではスーツ規定違反で高梨を含めて女子ばかり5選手が失格になり、FISの対応を疑問視する声も出た。今季はスキー板やスーツのサイズに関わる体のサイズをより正確に測るため、レーザー機器を導入。夏の大会から選手と計測担当が積極的に意見交換した。こうした取り組みについて、吉田さんは「失格者が出る前におかしなところがあれば事前に理解し合うことが大切」と意義を強調する。 来季は男子のW杯を兼ねて行われる年末年始恒例のジャンプ週間に、初めて女子が参加する見通し。本場欧州で人気のジャンプ週間には数万人の観客が訪れ、熱気と興奮は何倍にもなる。「男子に合わせて開催するのは女子にとって大変喜ばしい」と吉田さん。黎明(れいめい)期から見守ってきたジャンプ女子の発展に目を細めている。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕オンラインインタビューに答える国際スキー・スノーボード連盟の吉田千賀レースディレクター=16日