連覇に向け、何度も食い下がった。フランスのエムバペは2点を追う後半35分、味方が得たPKで位置に付く。表情は変わらない。右足で放ったシュートがGKの手をはじき、ゴール左へ。それまでは自身もほとんど攻撃に絡めなかった中、チームを勢いづけた。 直後に最大の見せ場。味方とのワンツーでゴール前へ。浮いたボールに合わせ、右足を振った。倒れ込みながら放ったボレーシュートを突き刺して同点。再びリードを許した後の延長後半13分にもPKを決めた。W杯決勝ではハースト(イングランド)以来、56年ぶりのハットトリックを達成した。 試合前まで5得点で並んでいたアルゼンチンのメッシとの争いを制し、8ゴールで得点王に輝いた。PK戦で自身は1番手のキッカーに。その前に蹴った2本と同じコースで左隅に決める強心臓ぶりを発揮したものの、チームは最後に力尽きた。口を真一文字に結び、表彰式で笑顔はない。選手が取材対応するミックスゾーンでは、呼び掛けに応じることはなかった。 19歳で4ゴールを挙げ、鮮烈なデビューを飾ったのが4年前の前回大会。メッシは今大会で「最後」を明言し、ポルトガルのロナルドも年齢的に次はないだろう。W杯の主役を担ってきたスーパースターが消え、一時代が終わりを告げる。大会の顔を引き継ぐのに十分な非凡さを披露したエースが、衝撃を残してカタールの地を去る。 (ルサイル時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕準優勝のメダルを胸に唇をかみしめるフランスのエムバペ=18日、ルサイル 〔写真説明〕PK戦でアルゼンチンに敗れ、ぼうぜんとするフランスのエムバペ=18日、ルサイル(AFP時事) 〔写真説明〕延長後半、同点のPKを決めるフランスのエムバペ=18日、ルサイル 〔写真説明〕後半、同点ゴールを決めるフランスのエムバペ=18日、ルサイル(AFP時事)