ほぼ赤く染まった6万8000人超のスタジアムはまるでホームのようだった。天を仰いだモロッコのイレブンに、サポーターから惜しみない拍手が送られた。 「結果は残念だけど、自分たちのことを誇りに思う」と主将のサイス。初の決勝を目前に快進撃は止まったが、前回王者のフランスにひるまず立ち向かった。 DFの対応ミスから開始早々に失点。これまでの堅守がほころびを見せる場面が珍しく続いた。それでも、前半終了間際のCKで、ヤミクがこぼれ球をオーバーヘッド。ゴール寸前のところでGKロリスに止められたが、後半に入るとさらに攻勢に出た。 ジエシュらが並ぶ自慢の右サイドからの攻撃で相手守備を完璧に崩すなど、深い位置を何度もえぐってフランスを脅かした。後半20分すぎまでいけいけのムードだったが追い付けず、同34分に2点目を失って万事休す。サイスは「運がなかった」と振り返った。 スペイン、ポルトガルを撃破して、アフリカ勢、アラブ諸国として初めての4強入り。鮮やかな堅守速攻を武器に快挙を遂げた。手堅い守備だけでなく、高い技術も伴った縦に速い攻撃は観客を魅了した。「最後に3位をつかみ取りたい。挑戦になる」とレグラギ監督。前回準優勝のクロアチアにも、これまで通りのスタイルを貫いて戦う。 (アルホル時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕試合後、選手に拍手を送るモロッコのサポーター=14日、アルホル 〔写真説明〕フランスに敗れ、サポーターにあいさつするモロッコのレグラギ監督(中央)=14日、アルホル 〔写真説明〕前半、オーバーヘッドシュートを放つモロッコのヤミク(手前)=14日、アルホル