ベスト16の壁にまたも阻まれたクロアチア戦後、4大会連続出場の長友が言った。「歴代最強のチームだった」。森保監督の人柄と、ベテランの支えで生まれた結束力には素晴らしいものがあった。 W杯初代表は19人。経験者主体の守備陣がどっしりと構え、攻撃陣を支えた。「『W杯で成功したい』という野心を持って戦ってくれるエネルギーを期待したい」。指揮官の求めた通りに堂安、浅野、田中、前田の初出場組がゴールを挙げた。 森保監督が、東京五輪男子代表も率いた利点も生かされた。五輪に向け、5年前に就任したチームからコンセプトは変わらず、幅広く選手を呼んで強化を重ねた。五輪世代では長く3バックの布陣を用いていたことも、今大会の戦術変更に柔軟に対応できた側面がある。 4大会連続代表の川島や長友、吉田らは今回が最後のW杯かもしれない。4年後に向けて世代交代が進むだろう。次代を担うのは、堂安や冨安ら東京五輪世代だ。その一人となる三笘は「ベテラン選手は後輩に託すと言っていた。確実にバトンは受け継がないといけない」と決意を込めた。 日本協会は、2030年までにベスト4、50年までにW杯優勝の大目標を掲げる。森保体制下で、欧州勢との強化試合はセルビアとの1試合だけ。欧州ネーションズリーグがあるため、今後もマッチメークは難しくドイツ、スペイン、クロアチアと真剣勝負の場で戦えた今回の経験は貴重だ。各試合を分析した課題と成果を遺産とし、次回へつなげることが重要になる。 初めて2大会連続で16強入りし、優勝経験のある欧州2チームを撃破。「世界がこれまで持っていた日本の印象を変えるだけの攻撃も守備もできた」と指揮官。強豪と比べ足りないものを求めるのも大切だが、世界に通用した日本の強みに目を向けてさらに伸ばしていくべきだろう。「新しい景色」は、その先に必ず待っている。 (ドーハ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕クロアチア戦の前半、ボールをキープする冨安(中央)=5日、アルワクラ 〔写真説明〕1次リーグのドイツ戦、同点ゴールを決める堂安(左から3人目)=11月23日、ドーハ(ロイター時事)