試合後、ブラジルのネイマールはピッチにあおむけになり、ユニホームで顔を覆った。涙が止まらない。仲間に起こされ、ようやく立ち上がった。 主役になるはずだった。好機を生かせないまま、0―0で迎えた延長前半のロスタイム。背番号10は中盤付近でボールを受けると、味方とのパス交換でゴール前の狭いスペースへ。激しく寄せてきた相手を問題にせず、前に出たGKもかわした。ゴール右のわずかな角度から蹴り込んだ。 待望の先制点は、ブラジル代表として通算77点目。王様ペレの持つ歴代最多得点に並ぶ節目のゴールだった。しかし、勝利が見えてきたところで追い付かれ、PK戦で涙をのんだ。「今は言葉がない。われわれはよく戦った」と絞り出した。 毎回のように優勝候補に挙げられる中、2大会続けて準々決勝で姿を消した。優勝した2002年日韓大会の決勝でドイツに勝ったのを最後に、決勝トーナメントでは欧州勢に6連敗となった。 30歳のエースは今後の代表活動について問われ、「正直分からない。ブラジル代表として戦うドアを閉じるつもりはないが、100%戻ってくるとも言えない」と言葉を濁した。1次リーグで負傷し、5日の決勝トーナメント1回戦で復帰したばかり。ここからさらに加速というところで、王国の戦いは終わった。 (アルラヤン時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕PK戦でクロアチアに敗れ涙ぐむブラジルのネイマール(中央)と、手を差し伸べるチームメート=9日、アルラヤン 〔写真説明〕延長前半、先制ゴールを決めるブラジルのネイマール(右)=9日、アルラヤン(AFP時事)