今大会で初めて4バックではなく、3バックの布陣でスタート。日本がこの4年間、数度しか試していない形だった。スペインを自陣に引き込んで守る戦い方で前半を1失点でしのぐ。金星を挙げたドイツ戦と同様に、逆転劇の伏線となった。 森保監督は「試合の2日前の段階では違うプランで考えていた」と明かす。5―3―2を試したものの、前線からのプレスがはまらない。「選手たちも違和感があった」と鎌田。ミーティングで提案し、3―4―3の布陣が採用された。大一番で腹をくくった。 最終ラインに板倉、吉田、谷口を並べ、守備時は長友と伊東も吸収される形ではね返す。相手の前線の配置に合わせ、マンツーマンで対応した。前田と背後の鎌田と久保が連動し、相手の中盤のパスコースを限定。汗かき役をいとわなかった久保は「日本から点を取れるチームはあまりいないかな」と胸を張った。 昨夏の東京五輪でスペインと激突した際は4バックで敗戦。鎌田は所属クラブで参加した昨季の欧州リーグ準々決勝でスペイン代表の主力を含むバルセロナを撃破。今回と同じ布陣で臨み、成功体験があった。スペインは昨年の欧州ネーションズリーグ決勝で3―4―3のフランスに敗れたこともある。確かな勝算あってのことだった。 日本のDF3人に前半のうちに相次いで警告が出されるなど、難しい状況を強いられた。それでもW杯で優勝経験のあるチームを再び破ってみせた。今大会は交代枠が従来の3人から5人に増えたことも大幅な戦術変更を後押しする。「日本が世界と戦うためには粘り強く相手の良さを消しながら戦うこと」と指揮官。その言葉を体現したような快挙だった。 (ドーハ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕決勝トーナメント進出を決め、喜ぶ日本の選手=1日、ドーハ