W杯史上初めて実現したウェールズとの英国ダービー。歴史的な一戦で負けるわけにはいかなかった。イングランドのラッシュフォードが、眠れる獅子を目覚めさせた。 0―0の後半5分、FKを直接ゴール右へ突き刺した。25歳はピッチ上で膝をつき、目を閉じて天を指さした。「数日前に友人を亡くした。長い間、がんで闘病していた。大きなサポーターだった」。亡き友人へゴールをささげた。 この一撃が決定力を欠いていたチームの猛攻を生む号砲となった。1分後にフォーデンが加点。後半23分には再びラッシュフォードがドリブルで中央へ切り込み、GKの股下を突く鋭いシュート。イングランドのW杯通算100点目を刻んだ。 イタリアに挑んだ昨年の欧州選手権決勝。ラッシュフォードはPKを外して地元優勝を逃し、誹謗(ひぼう)中傷を浴びた。不振から今年は代表招集外も経験。逆境を乗り越えた11番は、今大会初の先発起用に満点回答だ。初戦のW杯初ゴールを含め、計3得点と輝きを取り戻した。 B組を首位で突破し、決勝トーナメント1回戦はセネガルとぶつかる。「チームには大きな野望がある」とラッシュフォード。56年ぶりの頂点へ勢いが加速してきた。 (アルラヤン時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕後半、FKから直接先制ゴールを決めるイングランドのラッシュフォード(左端)=29日、アルラヤン 〔写真説明〕後半、チーム2点目のゴールを決めるイングランドのフォーデン(右)=29日、アルラヤン(ロイター時事)