28年ぶりの優勝決定ともえ戦を制し、初めて抱いた賜杯。阿炎は「すごく重かった」と率直に言った。自らの軽率な行動で台無しになりかけた力士人生に、明るい光が差し込んだ。 単独トップだった高安との本割は、長いリーチも生かして勝ち、3敗で並んだ。貴景勝を加えたともえ戦。初めて緊張が走ったというが、冷静さを保てたのは2人の映像を何度も見て研究してきたから。高安は注文相撲で仕留め、大関には持ち前の突き押しを生かして快勝した。 2020年の7月場所中に新型コロナウイルス対策のガイドラインに違反。3場所の出場停止処分などを受け、21年春場所に幕下から出直した。これを機に相撲との向き合い方を変え、偉大な先輩たちの映像から学ぶように。突き押しだけでなく、元横綱朝青龍らを参考に四つでも対応できる取り口を求めた。探究心を深めたことが、成長につながっているのだろう。 処分期間中、「迷惑をかけただけ稽古して返せ」と見守ってくれた師匠の錣山親方(元関脇寺尾)は今場所、体調を崩して休場。メールで助言を受ける毎日だったといい、「早くおかげさまでと言いたい」。28歳の目に涙が浮かんだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕優勝決定ともえ戦、阿炎(右)は押し出しで貴景勝を破り初優勝=27日、福岡国際センター 〔写真説明〕優勝決定ともえ戦、阿炎(奥)は高安をはたき込みで破る=27日、福岡国際センター