大きなどよめきで会場が震えた。後半に追い付き、さらに攻勢に出たサウジアラビア。ペナルティーエリア内で切り返したS・ドサリが振り抜いたシュートは、美しい軌道でゴール右に吸い込まれた。 前半は防戦一方だった。アルゼンチンに簡単にパスを奪われ、何度もゴール前に迫られる。失点はメッシのPKによる1点にとどめていたが、強豪国との差をまざまざと見せつけられた。 シェヘリの一発で空気が変わった。スルーパスに抜け出し、鮮やかに決めた同点ゴール。緑色のユニホームに身を包んだサポーターのボルテージが上がった。国境を接するカタールで開かれる中東初の舞台。大声援で選手の背中を押した。 近年は目立った成績を残せず、1次リーグC組では最弱との前評判。それでもルナール監督は前日会見できっぱりと言った。「そういった予想を覆すことが今の目標だ。W杯には多くのサプライズがある」。選手の力量を信じ、その言葉を現実へと変えた。 チームにとってW杯の初戦は鬼門だった。2002年日韓大会ではドイツに0―8と大敗し、前回大会も開催国ロシアを相手に0―5で散った。苦い記憶を吹き飛ばすような、歴史に残る逆転劇となった。 (ルサイル時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕後半、勝ち越しのゴールを決めるサウジアラビアのS・ドサリ(左から2人目)=22日、ルサイル(ロイター時事) 〔写真説明〕後半、同点ゴールを決めるサウジアラビアのシェヘリ(奥)=22日、ルサイル