太い腕の碧山に顔を張られて一瞬、王鵬は意識が遠のいた。そんな状況の中、左を差すと、右もねじ込んで中に入る。しっかりと腰を落として寄り切り。9連勝にも「ほとんど内容は覚えていない」。少し照れくさそうに振り返った。 意識がない中で戦った経験はないという。それでも「体が勝手に動いてくれた」のは、日頃の稽古のたまものと言える。初日こそ黒星だったが、徐々に集中力も高まってきているようだ。 1敗のトップに並ぶ豊昇龍は同学年で、2018年初場所で初土俵を踏んだ同期。王鵬は大鵬を祖父に持ち、豊昇龍は朝青龍のおいに当たる。大横綱の血縁者として早くから注目されてきた。出世で差をつけられ、相手は今や関脇。西前頭13枚目の王鵬は「番付が全然違うので、意識していない」と話すものの、内に秘めるものはあるだろう。 9日目には、幕内では自己最速で給金を直し、初の2桁白星を目指して終盤戦に挑む。「いつも後半5日間が悪いので、いい相撲を取っていきたい」。22歳が面白い存在になってきた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕王鵬(右)は碧山を寄り切りで破る=22日、福岡国際センター