追い求めてきた相撲を実力者相手に披露した。久々に「満員御礼」の垂れ幕が出た館内を沸かせたのは、新小結の翔猿。4連敗を免れて白星を先行させ、「思い切りいこうと思っていた」と胸を張った。 「下からの攻め」が信条の関脇若隆景を、さらに下から攻め続けた。低く当たり、いなして顎を引く。脇も締めて押し上げるように前へ。最後は土俵際で相手に引かせ、「どんどん攻めることができてよかった」。自信が深まる完勝だった。 しこ名のごとく、俊敏に動いて相手を惑わす取り口が持ち味だったが、約半年かけて「前への圧力」も磨いてきた。思うような成績を残せなかった頃、周囲の助言もあり、仕上げのぶつかり稽古を申し合いの前などにも行うなど、懸命に汗を流してきた。背中を押したのは、同じ部屋の大栄翔、同学年の御嶽海らの存在。「悔しさや、みじめさがあった」と明かす。 学生相撲出身では、初土俵から史上2番目のスロー出世で新三役に昇進した30歳。「いい相撲だったので、ここから」と大暴れを誓った。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕翔猿(左)は押し出しで若隆景を破る=19日、福岡国際センター 〔写真説明〕若隆景を攻める翔猿(右)=19日、福岡国際センター