大相撲九州場所は13日、福岡国際センターで初日を迎える。9月の秋場所で37歳10カ月の最年長(年6場所制となった1958年以降)で賜杯を抱いた玉鷲は「地元」との愛着も込める福岡県朝倉市で場所に備える。新三役昇進を見据える琴ノ若の姿も追った。 ◇朝倉市との絆 所属する片男波部屋が九州場所の宿舎を構える朝倉市内で10月中旬に行われた祝賀会には、約300人が集まった。玉鷲の勇姿に感涙を浮かべる人も。モンゴル出身ながら、故郷のような厚い支援を受けてきた。三役に返り咲いて臨む場所への意欲は高まった。 部屋の宿舎がこの地に移ったのは2010年。自治会組織「三奈木地区コミュニティ協議会」が市から無償で借り受けた朝倉農高(廃校)の校舎を使ってきた。同校の相撲部が地域に愛されてきたことなどから、もともと相撲熱は高かった。協議会の武田雄一会長は「コロナ禍前は場所中の稽古見学が住民の大きな楽しみだった」と語る。 地域の絆を一層深めたのが17年7月の九州北部豪雨。甚大な被害に傷ついた住民のため、仮設住宅への慰問や炊き出しに部屋の力士は奔走した。先頭に立ったのが玉鷲。白星で励まそうと、発生約4カ月後の同年九州場所前には被災者に勝ち越しを誓い、東前頭筆頭で11勝を挙げた。 10年以降、九州場所では小結で10勝して技能賞を獲得した16年など、3度の2桁白星があって験がいい。応援を味方にしてきただけに「みんなにいい報告がしたい」。場所中に38歳の誕生日を迎える「鉄人」の元気な相撲は、復興への歩みを進める人々の背中も力強く押すはずだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕九州場所に向け、稽古を積む玉鷲(右)=5日、東京都墨田区の片男波部屋