勝利への執念と呼ぶ外はない。3点を追う七回。ヤクルトはつなぎにつなぎ、安打は1本だけで一挙5点を挙げて大逆転。「常に全力、常に集中」と唱えてきた高津監督。選手は大一番でその高い意識を存分に発揮した。 敗戦ムードが濃い中でも、誰一人として諦めなかった。阪神先発の青柳に無得点に抑えられていたが、七回は二つの四球などで2死満塁。山崎の一、二塁間を抜けそうな当たりが敵失を誘い、まず2点。なお満塁となって村上に打席が回った。 村上の当たりは力なく内野を転がったが、必死の形相で全力疾走し、ヘッドスライディング。打球をつかんだ浜地は慌てて一塁へ悪送球し、3人が生還した。 シーズン中、何度も逆転を演じてきたヤクルト。その戦いを象徴するようなシーン。一塁上の三冠王は、肩で息をしながら破顔した。「いいヒットじゃなかったけど、僕は満足している」 CS3連勝で一気に日本シリーズ進出を決めた。村上は「短期決戦は勝てればいい。状態がいい人も悪い人も勝ちに向かって頑張っている」とチーム一丸を強調していた。華やかな本塁打だけではなく、泥臭くても勝ちにこだわる姿勢は、球団史上初の日本シリーズ連覇への原動力となりそうだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕7回、適時内野安打を放ち、一塁に向かうヤクルトの村上(左)。右は一塁へ悪送球する阪神の浜地=14日、神宮 〔写真説明〕7回、逆転の敵失を誘う適時内野安打を放ち、笑顔を見せるヤクルトの村上=14日、神宮