一人のレジェンドドライバーが鈴鹿に別れを告げた。今季限りでF1から引退する総合優勝4回のセバスチャン・フェテル(35)=ドイツ、アストンマーティン=にとって日本グランプリ(GP)の舞台、鈴鹿サーキット(三重県)は大のお気に入り。9番手に食い込んだ8日の予選ではチームラジオで、こんな本人の言葉が流れた。 まず英語で「本当に楽しめた。このサーキットは他のどこよりも素晴らしい」。続けて日本語で「アリガトウゴザイマス、スズカ」。 テクニカルで攻めがいのある鈴鹿での走行を毎年楽しみにしていたが、日本GPは過去2年、新型コロナウイルスの影響で中止に。3年ぶり開催の今年は自身の引退年と重なり、万感の思いを胸に臨んだ。 迎えた9日の決勝。雨で長時間の中断を挟む難しい展開になったが、ローリング再スタートと同時にピットイン。タイヤを大雨用から小雨用へ交換した。この戦略が的中し、後方から一気に6番手へ浮上。そのまま今季自己ベストタイの6位をもぎ取った。 チームは公式サイトに、日本GPでファンとの交流を楽しむフェテルの様子を動画にまとめて配信。その中でフェテルは「素晴らしい時間を過ごすことができた。日本が大好きだし、鈴鹿と日本にありがとうと言いたい。またいつか会いましょう」と結んだ。 レッドブル、フェラーリなどで積み上げた勝利は歴代3位の53勝。レッドブル時代、鈴鹿での日本GPは計4勝し、2011年には3位に入り、総合2連覇を決めた若き日の思い出もある。最後の鈴鹿で満足のいく結果を残し、雨の中、ファンの大歓声を浴びた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕F1日本グランプリで決勝を前に手を振るアストンマーティンのフェテル=9日、三重・鈴鹿サーキット 〔写真説明〕F1日本グランプリ決勝、アストンマーティンのフェテル(手前)の走り=9日、三重・鈴鹿サーキット