2019年2月1日、カタールが新たな歴史を刻んだ。アラブ首長国連邦(UAE)で行われたサッカーのアジア杯決勝で日本を破り、過去最高の8強を飛び越えて頂点に。第1回大会を除き、初めて予選突破経験がないままワールドカップ(W杯)を開催する中東の小国にとって、アジア王者の称号は悲願だった。 手放しで称賛されたわけではない。準決勝で戦ったUAEが、カタールは資格がない選手を起用したとしてアジア連盟に抗議。最終的に棄却されたが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する事態に発展した。両国は当時国交を断絶中。わだかまりは残った。 やり玉に挙がったのがエースFWモエズ・アリとDFラウィ。カタール国外にルーツがあり、継続居住条件を満たしていないと指摘された。カタールはかつて帰化選手を代表の主軸に据えていた時期がある。ウルグアイ出身のFWセバスティアンはその筆頭だ。 アジア杯の快挙は強化方針を見直した成果だ。自前の育成の重要性を認識し、04年に国家プロジェクトのアスリート育成拠点「アスパイア・アカデミー」を設立。スペイン出身のサンチェス氏は06年から育成組織でコーチなどを務め、17年に代表監督に就任した。14年のU19(19歳以下)アジア選手権を制したアリらはアカデミー育ち。カタール代表としての自覚を胸に秘める「黄金世代」がA代表の中核を担う。 招待チームとして19年南米選手権に参加するなど、世界の強豪と対戦を重ねてきた。「努力を惜しまなかった。W杯では競争力のあるチームとして戦えるだろう」とサンチェス監督。開催国の成績は大会全体の盛り上がりを左右する。世界を驚かせるべく、開幕戦の笛を待つ。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕決勝で日本を破り、アジア・カップ初制覇を遂げて表彰式で喜ぶカタール・チーム=2019年2月1日、アブダビ(AFP時事)