村上の三冠王を熊本・九州学院高時代の恩師、坂井宏安さん(65)も祝福した。「おめでとう以外にない。でも、本当のおめでとうは今年も日本一になってからかな」 当時から打球の飛距離は群を抜いていた。使い込まれて飛びにくいボールでも、ぽんぽんと練習場の外へ運ぶ。体を触ると「筋肉が柔らかい。ごつごつではなく、赤ちゃんのよう」。がっちりした見た目とは違った感触に驚いた。 柔軟性は技術にも生きた。上半身と下半身が連動し、「あんなにトス打撃のうまい子は見たことがない」。体勢を崩されてもバットの芯で捉えて広角に飛ばし、「うまく体が連鎖し、球に逆らわずにいろんな方向に打てていた」と振り返る。 性格は豪放に見えて素直。マイクロバスでは、坂井さんの後ろが指定席。「聞き上手だった。良い点、悪い点をずっと話していても、まじめに聞いていた」。嫌なことから逃げず、常に課題と向き合う姿が今も印象深い。 3年夏の熊本大会決勝で敗れた直後。後輩に「負けたのは僕らが力不足だったから。相手のベンチを見ろ。来年はみんなが喜ぶ番だ」と話す姿に頼もしさを覚えた。なのに、学校へ戻って2人だけになると「監督さんを甲子園に連れて行きたかったです」。こらえていた涙を流す主将に「ありがとう。ここからがスタートだぞ」と返した。 大きな体に夢と希望が詰まる22歳。坂井さんは「止まることなく突き進んでほしい。自分を超える気概で」と願っている。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕熊本・九州学院高の元野球部監督、坂井宏安さん。プロ野球ヤクルトの村上宗隆選手を育てた(本人提供) 〔写真説明〕熊本・九州学院高時代に練習で汗を流す現プロ野球ヤクルトの村上宗隆選手(恩師の坂井宏安さん提供)