日本選手では越えることができなかった王貞治(巨人)のシーズン55本塁打の壁を、ヤクルトの村上が22歳にして打ち破った。左右に満遍なくアーチを架け、歴代単独2位となる56本塁打。「王超え」を実現させた広角打法は、プロ入り前から光っていた。 ヤクルトの松田慎司スカウトは、熊本・九州学院高時代の村上の姿が、今も鮮明に焼き付いている。「広角に打てるというのはたまにいるが、ホームランというと別物」。視察した際、左中間に本塁打を放った村上に、大器の片りんを見た。 柔軟性も魅力だったと、ヤクルトの小川淳司ゼネラルマネジャー(GM)は言う。村上と王、シーズン50本塁打をマークした松井秀喜(巨人)はいずれも左打者だが、王と松井は右方向への引っ張りが顕著だった。 村上は外角球は逆らわずに流し、内角球は引っ張るなど打ち分ける。188センチ、97キロで体格は松井とほぼ同じだが、小川GMは「体が大きく、リーチも長くなると、引っ張る本塁打とか長打が多くなると言われるが、村上は無理にそういう打撃をしない」とみる。2017年のドラフト会議は清宮(日本ハム)、安田(ロッテ)、村上の3人の高校生打者が注目された中、「手首の柔らかい清宮、がっちりと固い安田。その間の柔軟性も固さもという印象が村上だった」と振り返る。 類いまれな打撃センスを生かすため、プロ入り後すぐに捕手から三塁手に転向。驚異的な成長曲線を描き、5年目で日本選手では初めての領域に足を踏み入れた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕7回、56号のソロ本塁打を放つヤクルトの村上(左)=3日、神宮 〔写真説明〕7回、56号本塁打を放ったヤクルトの村上=3日、神宮