取組後にあまり多くを語らない若隆景の心中を読むのは難しい。その関脇が7連勝で3敗を守って、優勝への意識があるかと問われると、「全くない」と言い切った。先を見ず、目の前の勝負に集中している姿勢が見て取れた。 宇良との一番。低い姿勢から何をしてくるのか分からない相手に恐る恐る取る力士も多い中、冷静に戦い切った。力強くおっつけた右を差し手に変えると、中に入って一気に前進。土俵際で粘る反動も利用し、右からすくって転がした。 新関脇で臨んだ3月の春場所で初めて賜杯を抱いたものの、その後の2場所は2桁白星に届かなかった。今場所も3連敗のスタート。もう一つ上の番付が遠のいたかに見えた中、持ち前の下からの攻めを生かして挽回。体の動きも確実に良くなってきた。 3敗以内の力士で三役以上は若隆景だけ。賜杯争いの上位に平幕がずらりと並ぶ混戦にあって、優勝の経験があるのも終盤戦で大きな武器になるだろう。「自分の相撲に集中したい」。自らに言い聞かせた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕若隆景(右)は、すくい投げで宇良を下す=20日、東京・両国国技館