真骨頂でもある動きの良さを存分に発揮し、新関脇が館内を沸かせた。「集中して自分の相撲が取れてよかった」と豊昇龍。先場所で左上手を引かれて完敗した逸ノ城を一方的に攻め立てた。 今回は自ら動いて、やや強引に左でまわしを引くと、上手を遠ざけるように横に回って揺さぶる。胸が合っても、警戒した相手は攻めが遅い。隙を見て左足を絡ませ、得意の外掛けで巨体をなぎ倒した。 「やるつもりではなかった」と振り返った足技。ここぞの場面で無意識に繰り出せるのは、60番ほど取る日もあったという場所前の稽古量のたまものだろう。すぐに動画で相撲内容を見返すことで同時に質も高めてきた。 3場所続けての小結だった先場所。9勝を挙げたが、ほろ苦さも味わった。モンゴルの先輩、逸ノ城が初賜杯を抱いたことに「なんで僕はできないのか」。負けず嫌いの心が騒いだ。 関脇となった今場所は上位戦が後半に組まれる見込み。「この気持ちが切れないように最後まで頑張りたい」。三役以上の土つかずが消えた中、土俵を盛り上げてくれそうだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕豊昇龍(左)は外掛けで逸ノ城を下す=13日、東京・両国国技館