ひときわ大きな拍手が湧く。巨人の一回2死三塁での攻撃。「4番ファースト、中田」との場内アナウンスを背に、どっしりと打席へ向かう。移籍2年目。第91代の4番打者となった中田は「やることは変わらない」と冷静だった。 粘った末の9球目。外角の緩い変化球を捉え、しぶとく二塁手の横を抜いた。いきなり役目を果たす先制中前打。「何とか食らい付いていった」。六回1死満塁の守備では好捕も見せ、若い山崎伊をもり立てた。 コロナ禍を挟んでも好調が続く。7月に復調した直後、下旬に陽性判定を受けて離脱。その間は自宅で筋力強化や素振りに精を出し、状態を落とさないように努めた。「この時期に万全というのは、そうそうない。粘り強くやりたい」。8月の月間打率は3割8分5厘と、復帰後も快音は止まらない。 日本ハム時代に酸いも甘いも味わい、「4番は勝敗を分ける。自分を信じてやるしかない」が信条だ。不調で6番に下がった岡本和を思いやり、「(調子が)戻るまで、みんなでカバーしたい」。Aクラス確保が最優先となる今、33歳が頼もしい存在になっている。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕1回、先制の適時打を放つ巨人の中田=11日、バンテリンドーム