米大リーグでエンゼルスの大谷翔平選手が同一シーズンの2桁勝利、2桁本塁打を達成した。常識を覆す投打の二刀流ぶりに、元巨人のエースで野球解説者の江川卓さん(67)は「ものすごいこと。野球が好き、打つのも投げるのも好きというだけでは語ることができない」と舌を巻く。 「リアル二刀流」に挑んで2年目。江川さんは投手としての進化に目を見張る。「昨季は9勝、打撃では本塁打王を争った。恐らく今年は投球に6割、打撃に4割と、投手に比重を置いている」。160キロ台の速球が武器でも、今季は変化球主体で抑えるなど自在の投球。「昨年よりばらつきがなくなった。今年の投球は(100点満点で)90点はいく」とみる。 打撃はどうか。昨季はア・リーグ本塁打王と2本差の46本。単純計算で、今季は減りそうなペースだ。「二刀流のすごく難しいところ。投球に力をかけた分、打撃が少し落ちても不思議ではない」。今季は最終的に30本台と予想。投げてはエース級、打てば主軸の数字で「野茂英雄さんやイチローさんら、一つに特化した選手でも大変なのに両方をやっている」と驚く。 ベーブ・ルースとの共通点を「打者中心の投手」と表現する。「打撃のいい投手」はいても「投手として活躍する打者」はまれで、「ルースを現代に置き換えると大谷さん」。その先駆者は投打両立の負担に苦しんだとされる中、大谷について「ローテーションを守った上でしっかり打ち、タイトルも争うのが彼の完成形では」と言う。 大谷が日本ハム入りした2013年、投手か野手のいずれかに専念すべきと提言していた。「私の当初の考え方を完全に超えている」と苦笑いし、「自信があり、それを貫いている。お見事」。道なき道を切り開く28歳に、以前から変わらない願いもある。「投手か打撃のタイトルを取ってほしい。名前が残り、『最多勝の年に35本塁打も打った』とか話に花も咲く。ルースと同じ伝説に」。 ◇江川卓さんの略歴 江川 卓(えがわ・すぐる)栃木・作新学院高時代の公式戦で完全試合2度を含む多くの無安打無得点試合を達成し、「怪物」と呼ばれた。法大などを経て78年のドラフト会議で阪神の1位指名を受け、79年1月にトレードで巨人入り。80年から2年連続で最多勝、81年にはセ・リーグ最優秀選手にも輝いた。87年に現役引退。通算成績は266試合の登板で135勝72敗3セーブ、防御率3.02。長く野球解説者を務め、現在はユーチューブの公式チャンネルで解説などの動画も投稿している。67歳。福島県出身。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕元巨人投手で野球解説者の江川卓さん 〔写真説明〕アスレチックス戦に先発し、今季10勝目を挙げたエンゼルスの大谷=9日、オークランド