九回2死、カウント2―2からの116球目。打球が中前に弾んだのを見届けると、オリックスのドラフト1位新人、椋木は思わず両膝に手をついた。プロ2試合目の登板でノーヒットノーラン達成かという快投を演じ、「悔しいが、白星がついたらいいと思っていたので良かった」と謙虚に振り返った。 テンポのいい投球で相手打線を翻弄(ほんろう)した。150キロ前後の直球に加え、変化球も切れ味抜群だった。「持ち味を徹底して、いい立ち上がりができた」。一回から三回にかけて5者連続三振。淡々とゼロを並べ、マウンドでは表情を変えなかった。 もちろん重圧も感じていた。大記録を期待し、試合が進むにつれて大きくなる歓声。「その気持ちに応えたい一心で投げたが、やりづらかった」。初安打を浴びたところで降板。球場全体がこの日一番の拍手でルーキーをねぎらった。 今月7日にプロ初勝利を挙げたばかりの22歳。中嶋監督は「しっかりゾーンで勝負できていた」と褒めたが、椋木は「ここで達成しててんぐになるのも良くない。いい経験になった」。慢心のない右腕なら偉業を狙うチャンスはまた来るはずだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕撮影に応じるオリックス勝利投手の椋木(右)と2ランを放った吉田正=20日、京セラドーム