元大関が本場所の土俵に戻ってくる。日本相撲協会が定めた新型コロナウイルス対策のガイドライン違反による6場所の出場停止処分が明けた朝乃山が、名古屋場所で三段目から出直し。しこ名の下を本名の「朝乃山広暉(ひろき)」に改めて心機一転、臨む。 6月11日の朝稽古後、師匠の高砂親方(元関脇朝赤龍)は「1年は長いが我慢して、本当に我慢、我慢しか言っていない」。弟子の思いを代弁するように、これまでの日々を振り返った。 昨年の処分決定後は気持ちが大きく落ち込み、かつて朝乃山の付け人を務めていた十両の朝乃若も「本当に大丈夫か」と心配するほどだったという。そんな状況の中、若い衆として部屋の掃除や雑用をこなしながら、地道に稽古を重ねてきた。 師匠は「顔つきも体も変わってきた。そういう意味で、今からだと思う」。精神的に一皮むけた姿を土俵の上で見せるときが来たと感じている。 故郷も復帰を待ち続けた。富山後援会の青木仁理事長が朝乃山に会ったのは、昨年8月が最後。朝乃山の父、石橋靖さんの葬儀だった。「この1年で何を学んできたのか、変わった姿を見たい」と見守るつもり。三段目からの再出発で周囲との力の差は歴然だろうが、「駄目押しなどしない礼儀をわきまえた相撲で勝ってほしい」。大関経験者の誇りも胸に土俵を務めてほしいと願っている。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕名古屋場所へ向けて稽古する朝乃山(右)=6月11日、東京都墨田区の高砂部屋