両チーム無得点で迎えた九回に援護点をもらっても、DeNAの今永は変わらず引き締まった表情だった。無安打投球を続けていた中での2点。本当はうれしかったが、「喜んでしまうと足をすくわれる。態度に出さないようにした」。 快挙達成の期待を背に、上がった九回のマウンドに、快投の要因が凝縮された。先頭の代打浅間、続く今川を140キロ台後半の直球で見逃し三振に。切れ、制球ともに抜群で、チェンジアップなどの変化球を意識させていたこともあり、いずれもほとんど反応させなかった。 最後は野村を力のない右飛に仕留めて、ノーヒットノーランを達成。試合を終えた瞬間も、顔色を全く変えなかった。「ここは僕たちのホームじゃない。あんまり大喜びしても」。あくまでも冷静に、敵地で117球を投げ切った。 2019年はエースとして13勝を挙げたが、その後はけがに苦しんだ。20年途中に左肩を手術。昨年までの2年間は、ともに5勝にとどまった。 今季は「他を圧倒するような成績を残さなければ」と誓っている。左腕の炎症で開幕こそ出遅れたが、5月に復帰後は安定した投球を続け、復活を予感させている。お立ち台では「余韻に浸りながら、気を引き締めてやっていきたい」。自らに言い聞かせるようにして、視線を先に向けた。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)を達成し、ウイニングボールを手にするDeNAの今永=7日、札幌ドーム