混戦の様相を呈したまま終盤戦に入った夏場所で、照ノ富士が調子を上げてきた。1月の初場所で完敗している阿炎に納得の相撲で快勝。給金を直し、横綱が1差で優勝争いに踏みとどまった。 光ったのは立ち合いの踏み込みの良さ。阿炎の突き押しにのけぞりながらも、下半身はびくともしない。たまらず相手が引いたところを逃さず、一気に前へ。何もさせずに押し出した。 休場明けの今場所は、馬力のある押し相撲の力士に苦戦している。初日の大栄翔との一番のように、圧力を受けると残せずに三つの黒星を重ねた。だからこそ、突き押しの強い阿炎を圧倒した一番には「久しぶりに立ち合いで当たった感覚」と手応えを得た。相手の攻めを受け止めた上で前に出る取り口こそ、目指してきた「横綱相撲」。佳境で本来の自分を取り戻しつつある。 トップを走る隆の勝、3敗で並ぶ他の平幕4力士に賜杯を抱いた経験はない。「きょうみたいな当たりができれば」と自信を示した照ノ富士。逆転優勝へ、視界は開けてきていることだろう。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕照ノ富士(左)は阿炎を押し出しで下す=18日、東京・両国国技館