「体操ニッポン」が新たな時代を迎えている。男子は長く日本をけん引した内村航平が引退し、橋本大輝(順大)ら若手の精鋭が台頭。女子も世代交代の真っただ中。2022年は、24年パリ五輪に向けたスタートの年となる。日本体操協会の藤田直志会長(65)が時事通信の単独インタビューに応じ、展望を語った。 藤田会長は21年6月に就任。同年春まで約40年間勤務した日本航空で副会長も務めたビジネスマン。競技団体のかじ取りは「素人」と謙遜しつつも、外部出身として、従来は協会が気付きにくかった点にも目を向け、精力的に現場に足を運ぶ。 4月に東京体育館で行われた全日本個人総合選手権。東京五輪メダリストも出場したが、4400枚余りのチケット販売に対し、平均観客数は一日860人ほど。その中には選手や所属先の関係者も多かった。新型コロナウイルスの影響も残るとはいえ、藤田会長は「ちょっとショックを受けた。(要因は)コロナ禍だけではない」と話す。 もっと観客が楽しめる舞台に変えるべきではないか―。「(現状でも)玄人受けはするが、素人にはどこか受けない部分もある。これまで重視してきた競技性に加え、エンターテインメント性や観客の健康促進が必要」と熱を込めて語る。 具体策として、欧米で見られるようなエキシビションの実施や、子どもたちに器具を触ってもらい、交流の機会を増やすなどの案を持つ。会場に仮設のジムを設置し、来場者に体を動かしてもらうというアイデアも。「費用面も考えないといけないが、競技性にエンタメと健康促進の要素が加われば、もっとファンは増える」と青写真を描く。 昨年、北九州市で開催された世界選手権は演出が華やかで、コロナ下でも観客の入場を制限せず大盛況を収めた。小学生を招待したことで、地元体操クラブの入会者が増えたという。「やはり実際に来てもらうことが大事」と実感を込める。 協会の運営面では、役割分担を徹底させて責任者を明確にした上で、ファンやスポンサーの獲得を担うマーケティング部の新設や、事務局の人員増などを推進中。選手自身が動画配信やインターネット交流サイト(SNS)で発信する機会も増えた。「そうした声を吸い上げ、(改革を)実現していかなければならない」。体操界が一丸になる必要性を強調している。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える日本体操協会の藤田直志会長=10日、東京都新宿区 〔写真説明〕インタビューに答える日本体操協会の藤田直志会長=10日、東京都新宿区