正代の脳裏には苦い記憶がよみがえっていた。大関かど番で初日から4連敗した春場所に続いて、3日目まで白星を挙げられず、「悪い流れだな」と思ったという。不安もあった高安戦。立ち合いで当たり負け、ずるずると押し込まれた。 土俵際で踏みとどまると、ここからがむしゃらに攻めた。右をのぞかせながら体を入れ替え、倒れ込みながらの押し出し。「ちょっと、ほっとしている」と表情を緩ませた。 十分な稽古を積めずに臨んだ先場所とは異なり、今の体調は良好。課題は精神面だと自覚している。看板力士として、「勝たないといけない重圧が大きい。あまり意識しないようにしているが、やりづらさはある」。大関2場所目の2021年初場所を最後に、白星が2桁に届かずにいる。 先場所は後半戦で1敗しかしなかったように、心と体がかみ合えば、おのずといい相撲が取れるだろう。八角理事長(元横綱北勝海)は「勝つと気持ちが全然違う」と言い、本人も「この調子で連勝できたらいい」と自らにハッパを掛ける。今度こそ、存在感を示したいところだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕正代(左)は高安を押し出しで下す=11日、東京・両国国技館