拍手に包まれ向かったプロ初経験の九回のマウンド。27人目の代打杉本を空振り三振に仕留めて完全試合を達成すると、マウンドで一切変わらなかった表情が緩んだ。「あまり実感はない。うれしい」。駆け寄った仲間に祝福され、笑顔がはじけた。 プロ3年目、20歳の佐々木朗が投じた105球。捕手松川のミットにボールが収まるたびに観客がうなった。一回、3番の吉田正から圧巻の奪三振ショーが始まった。四回、再び迎えた吉田正。三振の少ない強打者相手にカーブ2球で追い込み、フォークを2球続けて空振り三振。木村投手コーチは「昨年まで変化球に不安があった。今までになかった配球」。160キロを超える速球が持ち味だが、投球の幅も示した。「三振は狙っていない。たまたま」と言うが、終わってみれば19個を奪った。 「令和の怪物」と呼ばれ、剛速球で高校時代から注目された。プロ入り後の2年間は体づくりを重視。「試合でできることは限られている。準備が大事」。昨年まで怖さがあった打者に対しても、自信を持って投げられるようになった。 井口監督は「いずれやると思っていたが、こんな早い段階でこういう試合ができるとは」。4球団競合の末、自身でくじを引き当てた金の卵の快投を喜んだ。 「この1試合で終わらず、良い投球を何年も続けられる投手になりたい」。青空の下、達成した大記録。前途洋々の若者は何度も同様の記録を打ち立てていくに違いない。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕オリックス戦で完全試合を達成し、捕手の松川(手前)と喜ぶロッテの佐々木朗=10日、ゾゾマリン 〔写真説明〕好投するロッテ先発の佐々木朗=10日、ゾゾマリン