前日の初黒星の影響はみじんも感じさせなかった。結びで新大関の御嶽海を圧倒。1敗を堅持した高安は柔らかい表情で「きょうも気楽に、のびのびやろうと思っていた」。賜杯争いの中にいる緊迫感が、不思議と伝わってこなかった。 立ち合いで浅く左上手をつかみ、「いいところが取れてペースを握れた」。胸を合わせると御嶽海の動きが止まる。慌てず右前まわしも引き、相手の巻き替えに乗じて寄り切った。 優勝戦線に絡むのは1年ぶり。昨年の春場所は12日目まで単独トップを守ったが、硬さが出て翌日から3連敗を喫した。何度も味わった苦い経験から学んだのは、「切羽詰まってやってもいい結果は出ない」ということ。この日の相撲ぶりからは、精神面での進歩が垣間見えた。 2敗力士が消え、若隆景と一騎打ちの様相を呈してきた。「持てる力を土俵で発揮して、それで負ければ弱いということ。精いっぱい取って後は結果がついてくる」。経験豊富の元大関。最後まで肩の力さえ抜ければ、初優勝が見えてくる。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕御嶽海(左)を攻める高安=24日、エディオンアリーナ大阪