木更津総合のエース、越井は延長戦に入ってから、さらにギアを上げた。1球ごとにうなり声が上がる気迫の投球。「絶対にエースとして投げ切って、野手に流れをつくってあげようと思って投げていた」。13回166球を投げ切り、チームをサヨナラ勝ちに導いた。 最速146キロを誇るが、この日は球速を抑えて制球を重視した。正確に内外角へ投げ分け、山梨学院の強力打線を6安打1失点に抑えた。 冬に磨きをかけた制球が特に光ったのは、延長十三回のタイブレークだった。無死一、二塁のバント処理で三塁に投げて二走を封殺すると、次の打者には外角低めを狙った。「アウトローに投げていればヒットになることは少ない。しっかり投げ切ろうと思った」。二ゴロ併殺を完成させて無失点で切り抜け、この日一番の雄たけびを上げた。完全に流れを物にし、裏の攻撃で決着をつけた。 木更津総合ナインにはタイブレークの苦い記憶がある。昨夏の県大会決勝はタイブレークにもつれ込み、延長十三回にサヨナラ負けした。同じ轍(てつ)は踏まず、五島監督は「昨年の3年生の負けを、(昨年)レギュラーで出ていたメンバーが覆してくれた」と目を細めた。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕タイブレークの延長13回表山梨学院1死一、二塁、榎谷を併殺打に打ち取り、喜ぶ木更津総合先発の越井=21日、甲子園