アルペンスキー女子座位の5種目を滑り終えた村岡の表情は、晴れやかだった。最後の回転はメダルを逃して5位も「正直、一つも悔しくない。やり切った思い」。満足そうにそう言った。 優勝したライバルのアナレナ・フォルスター(ドイツ)ら上位4選手より、障害が重い。小刻みなターンを繰り返す回転は、体幹の強さで劣る村岡には不利。丁寧に旗門をくぐっても、十分なスピードを保てなかった。 昨夏は東京パラリンピックの陸上に出場し、夏冬の「二刀流」として注目された。一から始めた競技。求められる技術も筋肉も全く違って、うまくいかずに後悔の日々が続いた。2018年平昌パラで金一つを含むメダル5個と大活躍した後に経験した挫折を「得られたものが大きかった」と振り返る。東京パラを終えて雪上に戻った時、コーチからメンタル面で成長したと褒められた。 今大会では金3、銀1のメダルを獲得。前回から総数は減ったが金は二つ増え、自身でも「上回れた」と確信する。最初の滑降は選手団主将として「チームに勢いをつける」、連覇が懸かった得意の大回転は「絶対に負けたくない」。狙ってつかんだ頂点で、一つ一つの価値が大きかった。 東京パラから約半年で迎えた北京。「二刀流」の挑戦はこれで一区切りと考えている。陸上を続けるかどうかは決めていないが、スキーについてははっきり言った。「きっと4年後もパラリンピックを目指している」(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕アルペンスキー女子座位全5種目の金メダルを分け合った村岡桃佳(左)とフォルスター=12日、延慶