29歳の木原は、20歳で初代表の三浦と連携を深めて北京に乗り込んだ。3度目の五輪は、フリーにさえ進めなかった過去2大会とは手応えが全く違っていた。7位でペア日本勢初の入賞。フィギュア界に歴史を刻んだ。 息を合わせて跳ぶジャンプはSPで三浦の回転が抜けたが、フリーは3連続、単発とも乗り切った。木原は演技前に、「全部ミスでもいい。とにかく楽しもう」と励ました。三浦は「本当に救われた」。波長の合ったスピンやリフトで魅了。滑り終えると感極まった。 結成のきっかけは2019年夏、相性を確かめるトライアウト。木原が三浦を頭上に投げて回転させるツイストリフトを試した際、三浦が「こんなに滞空時間が長いんだ」と驚くほどの高さが出た。木原はその年の初めにこの技の練習で脳振とうを起こし、肩の負傷も抱えていた。「やめた方がいいか」と傾いていた心は「まだいけるんじゃないか」に変わった。 拠点のカナダで、世界選手権連覇の実績があるミーガン・デュアメル氏らの薫陶を受けてきた。昨季世界選手権は10位。今季はシリーズ成績上位6組で争うグランプリ・ファイナルの出場権を日本人同士のペアとして初めて獲得するなど飛躍し、北京五輪では日本の団体初メダルに貢献した。 ペア転向から9年の木原は、シングル時代に60キロだった体重が80キロ近くになるほどトレーニングを積み、屈強な欧米選手に負けない体を作りあげた。三浦は投げられて跳ぶスロージャンプの転倒で流血しても、恐怖心を表に出すことはない。リフトではより安定するポジションを探り続け、見栄えがよく減速しない武器に木原と磨き上げた。 ペアはシングルに比べて認知度が高いとはいえず、競技者も少ない。木原は「まだまだ僕たちが頑張らなければ次の世代は出てこない。4年後も8年後も目指したい」。この種目の未来も背負って、走り続ける。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕フィギュアスケートペアフリーで演技を終え、喜ぶ三浦璃来、木原龍一組=19日、北京