衝撃的な大崩れだった。ドーピング疑惑の渦中に放り込まれながらSP首位に立ったワリエワが、フリーでミスを連発した。得意の4回転ジャンプで2度も転倒し、トリプルアクセル(3回転半)は着氷が乱れて氷に手を付いた。優勝の最有力候補がまさかの4位。順位を知った「キス・アンド・クライ」ではしばらく動けず、取材エリアは無言で通り過ぎた。 幼少期は器械体操やバレエにも親しんだ。フィギュアの道を選んだのは、氷上で滑走するのが何より楽しかったから。4年前、五輪金メダリストや世界女王を育てたトゥトベリゼ氏に師事するため、モスクワの名門クラブに入った。 15歳にして4回転ジャンプの質と精度は当代随一。他の選手が勝つ望みも奪うという意味から、「絶望」の珍しい異名を持つ。 だが今回、その能力自体に疑問符が付いた。ワリエワの検体から見つかった禁止薬物トリメタジジンは、持久力向上の効果があるとされる。ジャンプの基礎点が1.1倍になる演技後半まで息が続けば、ミスをしにくくなるかもしれない。練習で、より自分を追い込みたかったのか。疑惑の目はコーチや医師にも向けられ、さまざまな臆測が世界中を飛び交った。 家族は祖父の薬を誤って摂取したと主張しているというが、大量摂取が禁じられた別の物質も検出されたという。疑惑の連鎖が止まらない中、最後は重圧に押しつぶされるようにして、ワリエワは舞台から降りた。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕フィギュアスケート女子フリーで転倒するワリエワ=17日、北京 〔写真説明〕フィギュアスケート女子フリーの演技後、泣き崩れるワリエワ。奥はトゥトベリゼコーチ=17日、北京 〔写真説明〕フィギュアスケート女子フリーで演技を終え、顔を覆うワリエワ=17日、北京