砂漠の国から冬の祭典へ―。サウジアラビア初の冬季五輪選手、ファイク・アブディ選手(24)が、夢舞台の雪面を滑走した。13日のアルペンスキー男子大回転に出場し、「母国を代表できたことを誇りに思う」と達成感に浸った。 悪天候でレースは荒れた。1回目をスタートした87人のうち、半数に近い41人が脱落。その難しい条件下で2回を完走し、44位になった。「ベストを尽くせたのでうれしい。滑り切ったことは、間違いなくプラス」と喜んだ。 米サンディエゴで生まれ、4歳の頃にレバノンで母からスキーを教わった。それから「スキーを愛しているし、僕の情熱そのもの」と言うほど夢中に。大学時代は米国で腕を磨いた。するとサウジ関係者が注目。代表選手として、昨年から本格的に国際大会に参戦した。 ただ、スキーに打ち込む環境を求めて苦労した。10年ほど住んだ母国は夏に気温50度を超えることも。「雪は降っても十分ではない。各国を渡り歩くのは、とにかく厳しかった」。欧州を転戦し、心身とも鍛え上げた。 サウジは冬季競技の普及に力を入れ始め、大型の屋内スキー場を建設中。「スポーツは多様であるべきだ」が持論のアブディも歓迎する。想像もしなかった五輪出場を現実にし、「情熱を注げるものを探すサウジの人々を、勇気づけられるといい」。可能性は無限大。祭典の雪に描かれた軌跡は、まばゆい。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕アルペンスキー男子大回転の1回目で滑走するサウジアラビアのアブディ=13日、延慶(EPA時事) 〔写真説明〕開会式でサウジアラビアの旗手を務めるアルペンスキー男子のアブディ(手前)=4日、北京(AFP時事)